先生のためのアイディア帳

効果的な指導法やエトセトラについて

時間の余裕と心の余裕とteachable momentsと

Photo by Robert Collins on Unsplash

自分の英語の授業の見直しができる気配がない。もちろん、そこそこ考え抜いた結果として今の授業がある。

 

でも、もっと生徒が学べるように変えたい。(管理職は授業観察はしてもその後助言をくれはしないので、)やはり、同じ学校の先生の授業を観察したり、SNSでの先生方のつぶやきからヒントを得るのがいいか…。と思ったとき、先日ぜひ試したいと思ったこちらのアイディアを思い出しました。

 

 

「授業は40分で計画」

天才…!

 

中学校は1コマ50分なので、私の場合は「授業は45分で計画」ということになります。あーーー、考えただけで!絶対!楽しい!

 

私にとって、英語の授業の楽しさの半分は、授業を通して生徒一人ひとりへの人物理解を深められるところにあります。(残り半分は、誰かと一緒に言語を学べる楽しさ。)そもそも、問いかけや指示への反応、個人活動やグループ活動の様子、スピーチや英作文の内容等々を観察しては声をかけ、観察しては声をかけ、と繰り返しているだけでも、徐々に生徒たちの人柄がわかってきます。ただ、英語の授業には、教科の特性上、生徒の人物理解においてもっと先まで踏み込めるポテンシャルが秘められています。

 

英語という教科の特性、それは、扱っているのが「言語」であるということだと私は思っています。「英語という言語を目的に合わせて使えるようになる」という学習目標に向かってさえいれば、授業で行われる言語活動は何であってもいいはずです。つまり、「くだらんおしゃべり」も十分ありだと。「くだらんおしゃべり」の7割が日本語でなされていても、そこから英語の授業へと展開させることはいくらでもできます。「今のその日本語、英語にするには言葉が全然足りてないのわかる?」「今考えた日本語、3歳にもわかる簡単な日本語で言い換えてごらん」「今言いたかった『ネコ』、a cat、the cat、cats、the catsのうちのどれだと思う?」「ねえ、今話していた内容のその感じ、現在完了の感じじゃん」と。

 

これは、英語でいうところのteachable momentsです。(teachable moment:アルク英辞郎では「教えるのに良い機会」と和訳しています。)

 

A teachable moment is an unplanned opportunity that arises in the classroom where a teacher has a chance to offer insight to his or her students. A teachable moment is not something that you can plan for; rather, it is a fleeting opportunity that must be sensed and seized by the teacher. Often it will require a brief digression that temporarily sidetracks the original lesson plan so that the teacher can explain a concept that has captured the students' attention.

Taking the time to explore this tangent is almost always worthwhile. A teachable moment could ultimately evolve into a full-blown lesson plan or unit of instruction.

(出典:https://www.thoughtco.com/what-is-a-teachable-moment-2081657

 

Teachable momentというのは、授業中に偶然生じる、生徒の学びを促すのに適したチャンスのことです。Teachable momentは事前に計画できるものではありません。むしろ、それは瞬間的に訪れるチャンスで、教員はそのチャンスに気づき、それを捉えなければいけません。生徒が興味を持った事柄について教員が説明していく必要があるため、teachable momentは元々の授業計画から逸れた短い余談となることが多いです。

この余談に費やす時間は、ほぼ必ず意味のあるものになります。Teachable momentは突き詰めれば1つの授業や1つの単元の指導にまで発展する可能性があります。

(拙訳:私)

 

そして、この計画されていない学びの瞬間に、それまで見えていなかった生徒たちの表情が見えたり、それまで聞こえていなかった言葉が聞こえたりすることがあります。その瞬間、「教室で授業を受けている生徒たちと教員」という枠組みや肩書が消えて、ただ「共に学ぶ人」が1つの経験を共有しているだけになる。これが楽しい。teachable momentがバッチリはまってみんなで「おー!」となるのも楽しいし、teachable momentが思ったよりteachable momentにならずに、でも、勘のいい生徒たちが何かを感じ取って、あちこちで「? あー! でも、あれ?」となるのも楽しい。生徒たちがお互いの新しい顔を知っていく様子を見るのも楽しい。そして、教員としても生徒への新しい理解を得ることができるのが楽しい。昨日よりも一段とキャラの立った人物たちが目の前にいる楽しさ。

 

授業の中にある時間的な余裕は、教員にとっての気持ちの余裕になります。気持ちに余裕があればteachable momentに気づくことができ、時間に余裕があればそのteachable momentを捕まえ、「いい余談」に展開させることができます。

 

「授業は45分で計画」。楽しみにやってみます。Happy teaching, my friends!!

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