先生のためのアイディア帳

効果的な指導法やエトセトラについて

【COVID-19】1学期をふり返る【中1担任・中1英語・ICT】

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Photo by Annie Spratt on Unsplash

 

 こんにちは。

 

タイトルの通り、1学期をふり返ってみたいと思います。熱中症対策と感染症対策とで他にすることもないので、ようやく重い腰を上げるに至りました。怠惰。(忙しさしかない学期中に参考文献に当たりながら日々のふり返りや先々の指導計画をしておられるロカルノ先生ややっちゃえ先生のような先生方は、一体何がどうなっているのか(日本語)想像もできません。)

 

 

まずはWikipediaより「日本における2019年コロナウイルス感染症の流行のタイムライン」です。(こちらを編集してくださっている方々、本当にありがとうございます。)

 

私の勤務校に直接関連したのは、以下の3つでした。

  1. 2020年2月27日、内閣総理大臣より、3月2日から春休みまで国公私立を問わず全国の小学校・中学校・高等学校・特別支援学校の一斉臨時休校を要請する方針が示され、3月16日時点までには、ほぼすべての学校が休校要請に応じた。
  2. 4月7日、日本政府は新型コロナ特措法32条に基づき、7都府県(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府兵庫県、福岡県)を対象に、4月7日から5月6日までの1か月間に期間を限って「緊急事態宣言」を発出した。
  3. 5月4日、日本政府は全国を対象に発出中の緊急事態宣言の期間を5月31日まで延長することを発表した。

 

そんなわけで、6月1日(月)から「分散登校×半日登校」(生徒側からすると週2日登校)が始まりました。2週目には「分散登校×半日登校」(生徒側からすると週3日登校)になり、3週目には「全員登校×全日登校」(生徒側からすると週5日登校)となりました。

 

担任業務

この数週間は実質的には「新学期のオリエンテーション期間」ですので、学活で行ういろいろな作業があります。私は中学1年生の担任なので、なおさら。それが今年は「COVID-19対応版」ということで、変更になったり簡略化されたり中止になったりしました。

 

ただ、この辺りの担任業務に関しては、分散登校のために一度に対応しなければいけない生徒の数が半減したおかげで、整然と進めることができた気がします。

 

加えて、これは公立中学校全体の傾向なのか、私の勤務校の特色なのかわかりませんが、何に関しても副担任の先生方が担任と交代しながら動いてくださったのが、非常に助かりました。副担任の先生が動いてくださることで私にも空き時間ができたので、その間に他の担任の先生方がどんなふうに生徒に話をしていらっしゃるか見て、それを参考にして自分のクラスの学活を計画することができました。私は今の勤務校は初年度なので、学校のルールから教室の場所まで、わからないことしかありませんでした。なので、「自分のクラスが登校しない日がある」とか「自分のクラスに行かなくてもいい時間がある」というのは、本当に本当にありがたかったです。

 

1週目と2週目は午後が「生徒のいない時間」だったので、そこで、その日あったことの共有や翌日の準備ができたのもすごくよかったです。普段はそういうことができるのは勤務時間外ですからね。毎日が半日登校だったらいいのに…(あっ、心の声が!)

 

教科指導

英語の授業の方は、うーん、今ふり返ってみると、うーん、よかったかもしれません。最中にあったときには「ちょっときついぜ…」と思っていたのですが、まあ、私の甘えだったかと。

 

ちょっときつかったのは、学校再開後の第1、2週目の両方がALTが入る授業だったからです。勤務校がある自治体ではALTが巡回指導を行っているため、ALTに授業をやってもらうタイミングを選ぶことができません。私はALTが来てくれるのであれば彼/彼女に最大限活躍してもらいたいので、そうするための内容とオリエンテーション期間でやりたい内容とを両にらみしながら授業計画を立てるのは、少し骨が折れました。分散登校の結果として各クラス間で授業のタイミングや時間数が大きくズレたりしたのも、小さな悩みの種ではありました。

https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/school/content/files/global/honbun_shiryou.pdf

1JET-ALT配置拡大、Non-JET ALT配置時数の拡大(提言1)平成12(2000)年度から島しょ部の都立高校のみに配置してきたJET-ALTを、平成25(2013)年度は新たに7校に5人配置し、平成26(2014)年度は、それを100校100人にまで拡大した。平成27(2015)年度は更に189校200人に拡大し、全都立高校及び都立中等教育学校定時制課程単独校を除く。)に配置した。これらのJET-ALTは、各学校で英語のティーム・ティーチングの授業や、部活動・学校行事等における交流を通して、生徒のコミュニケーション能力の向上と異文化理解の深化に取り組んでいる。また、平成27(2015)年度から、高校等に配置されているJET-ALTを、都内公立小学校・中学校・特別支援学校(27年度は100校、28年度は200校)に派遣し、外国人との文化交流を促進する事業を実施している。さらに、JET-ALTの配置拡大とあわせて、平成26(2014)年度以降、在京外国人を活用したNon-JET ALTの配置時数も拡大している。 

 

あとは、感染症対策が最優先となるためにゲームやペアワークなどのアクティビティができない、ということもありました。が、私はもともと「とりあえず生徒がアクティブに見えるだけのアクティブ・ラーニング」(言い方)には興味がないので、そのせいで大きく困りはしませんでした。それでも、7月に入ってただ7月に入ったからという理由で勝手にペアワークを解禁したところ、生徒たちの楽しそう感が予想以上にあったので、「お互いに向かって何かをしたり言ったりするだけでもよい刺激になるのだ」ということは思いましたが。「生徒たちの楽しそう感」と「英語力の向上」とは必ずしも相関関係にないので、アクティビティは必要なときにだけするようにしています。

 

それから、学習内容に関してももちろん大きな変更がありました。4月、5月が休校になり、6月の前半も分散登校とALTとのTTとでゆっくりのスタートになったため、1学期中では一般動詞の疑問文とその答え方(”Do you sing?” --- “No, I don’t.”)までしか進みませんでした。通常であれば、1学期中に一般動詞の三人称単数現在形や疑問詞を用いた疑問文まで終わったりするので、それを考えると遅れています。ですが、ラッキーなことに、中学1年生はここでの遅れを今年中に取り戻せなくてもかまいません。この学年はおそらく来年も私がメインで担当するので、来年もかけてジワジワと「通常の進度」に追いつけば十分だと思っています。「外国語活動」のテンションから「教科・外国語」に切り替えるのだけでも丸1か月くらいかかると思うので、ここで生徒たちをギュウギュウ焦らせなかったのはよかったのではと思っています。(ノートの取り方の指導1つとっても、1時間半かそれ以上かかりますよね。)

 

というのも、生徒たちは小学校から「英語」をやってきているのですが、本当に、学校によって、また、生徒によって、習熟度がバラバラなんです。特に、「書く」段になるとますますバラバラになります。アルファベットが書ける書けないの差があるのはもちろん、スペリングを正しくできるできない、文を書くルールを守って書ける書けない、など、英語にまつわる様々なルールを「書く」という動作と結びつけられるかどうかという問題がまずあります。そしてさらには、冠詞の有無、動詞の選び方、語順、といった、より語学的な面にかかわる問題もあります。こういったことは、生徒たちが書いてみて初めて教員が「この生徒はできる」「この生徒はまだできていない」と確認できるものです。生徒が「イェス、アイドゥー!」とか元気にしゃべっているのを聞いて安心してサクサク先に進んでしまうと、定期考査になって「おまえ、まじか…」と教員が慌てることになります。

 

どうなんでしょう。休業中に対面の授業と同等の指導ができて、休業明けにはそれをふまえて授業を進めることができた、という先生方は実際いらっしゃるのでしょうか。特に、中1英語でそれをするってものすごく難しくないですか? 中2だったら、新出単語を大量におぼえさせるとか、初出の長文を複数暗唱させるとか、Google Classroomを使って英作文やプレゼンテーションをさせるとか、既存の業者のサービスを使って確認テストを受けさせるとか、休業中にできることが何かしらあると思います。でも、中1で何ができますか? アルファベットもまだ間違えたりする、ましてフォニックス(文字と音の結びつき方のルール)も知らない生徒に、何をさせられますか? 「自宅学習?何それうまいの?」な生徒も少なくありません。共働きの家庭、シングルの家庭もたくさんあります。結局、私は、休業期間は「授業時数ほぼゼロ」とみなして6月からの授業を計画・実施しました。それでよかったと思います。

 

そうそう、とは言っても、フォニックスに関しては、1学期で「音読み(おとよみ)」の基本をすべて終え、ちょっとした応用である「サイレントe」もやることができました。これにはとても満足しています。なぜなら、これだけわかっていれば、生徒たちはこれからちょっとやそっとではスペリングに困らないからです。もちろん、これから例外と呼ぶには納得がいかないほどの数限りない例外が出てきて、生徒たちは日々「また例外かよー」となることになります。それでも、フォニックスの基本やサイレントeを知っているのと知らないのとでは英語を読んだり書いたりするのに天地ほどの差があると私は思っています。とりわけ、これまで文字を通じて英語に触れてこなかった生徒たちには、フォニックスを学ぶメリットは大きいかと。(すでに文字を通じて英語に触れている生徒は、何となく文字と音とのつながりを自分で発見している場合が多いです。)

 

そのようなわけで、COVID-19に翻弄された1学期でしたが、英語の授業および学習内容に関しては、総じて不満はありませんでした。それもこれも、中1全員を私が1人で教えているからこそ、と言ってしまえばそれまでなのですが。複数の教員がチームになって1学年を教えている場合は、自分がいいと思うようにできないことが必ず出てきますので。前任校でも前々任校でも1学年を他の先生方と組んで教えていたので「これ、やりたくないよー(これ、生徒にやらせたくないよー)」と思いながらもやら(せ)ざるをえなかったことはたくさん、本当にたくさん、ありました。自分1人ですべてを決めてやっていくことの責任は重大ですが、自分が学習効果が高いと確信していることをやれる裁量権があるというのは、なんというか、いいです。

 

遠隔授業についての雑感

休業期間中には、児童・生徒・学生の「学習機会の保障」というテーマに注目が集まり、ICT導入・活用推進派の私は前向きな気持ちで状況を見ていました。

https://www.mext.go.jp/content/20200618-mext_syoto02-000008021_6.pdf

 

2018年まで自分が学生として対面授業におけるICT機器の活用だけでなく、遠隔授業でのICT機器の活用も経験していましたので、「こうもっていけばできる」という仕組みづくりとその運用に関するイメージが具体的にできていたからです。

 

しかし。それが中学1年生に応用できるはずはないんですよね。考えてみれば考えるまでもないことです。自主的に大学院に通ってきている社会人学生と、義務教育の真っただ中の中学1年生が、同じように遠隔授業を受けられるはずがありません。コンピューター利用歴、一般的・専門的リテラシーなどが違っているのはもちろんのこと、さらにずっと大事なのは、中学1年生の大半はまだ「自律的な学習者」になっていないということです。理由はひとえに「自律的な学習者になっていけるような指導をまだ受けていない」から。

 

 

生徒たちが一度「自律的な学習者」になってしまえば、学習効果・教育効果の高い遠隔授業を行うことは可能だと思います。ただし、まだそうなっていない生徒たちにデバイスや資料やワークシートを与えて「さあ、これをやるんだよ」とやってしまうと、彼らにとっての自宅学習時間は「失われた学習機会」ということになってしまうのだと思います。これは今話題になっている「オンライン大学1年生」問題とも関連するかもしれません。

 

 

今ただ思いついたままに書いているのですが、生徒たちが「学び方を学ぶ」段階、すなわち「自律的な学習者へ育っていく」段階においては、同じ空間に指導者や他の学習者がいて、多様なインプットやフィードバックがオンタイムである環境がよいのかもしれません。(「多様なインプットやフィードバックがオンタイムである環境」というのは必ずしも「対面授業」である必要はないと思います。)一方、繰り返しになりますが、一度生徒たちが「自律的な学習者」になってしまえば、指導者や他の学習者がいつも周りにいなくても、実りのある学びができるようになるのではないでしょうか。

 

ただ、上に紹介してある初等中等教育局からの資料には

国際的にも高く評価されている「日本型学校教育」は、教師が学習指導のみならず生徒指導等の面でも主要な役割を担い、児童生徒の状況を総合的に把握し、知・徳・体を一体的に育んでいる。特に初等中等教育は、学校という場や地域社会で様々な集団活動を行い、多様な他者と関わり、対話することを通じて人を育てる営みであることに留意する必要がある。 

とあります。学習指導だけではダメだと。「生活指導等の面でも主要な役割を担」うとなれば、それは、対面の環境が望ましいという方向に議論が傾くのかと思います。(一般論&感情論的に)

 

図らずも長くなりました。今日もお付き合いいただきありがとうございました。それではまた次回まで。Happy teaching, my friends!!

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