先生のためのアイディア帳

効果的な指導法やエトセトラについて

ゴールはどこだ:最大多数の最大幸福を願って学習目標を設定すると授業がつまらなくなる可能性について

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Photo by Anisur Rahman on Unsplash

2020年ですね。今朝はロカルノ先生の投稿を読んで「今の高1、高3で成人なの、マジで…」と思ったり、日曜討論を見て「国民投票のときCM流すの、マジで…」と思ったり、2019年から話題になっている出来事すら全然追えていない自分を再確認した次第です。

 (訂正:2019年度の中3が高3で成人します。)

 

 

日曜討論のウェブサイトとツイッターアカウント、もっとなんとかすればいいのに。潜在的なユーザーはけっこういそう。)

 

先日も、中東で起きている問題について知ろうと思ってオンラインの記事を読み、「全体が100だとしたら0.01くらいわかったかも!」とエンジンがかかるのを感じていたら、なんとそれが2014年の記事だと読み終わってから気づき、「5年前に来やがれ」と自分にツッコんだばかり。

  

これにめげず、アンテナをたたんでしまわないようにしようとは思っています。

 

2019年の7月からまた日本の中高で教壇に立てることとなり、このブログに書いた教授法を活かしたり活かせなかったり、このブログに書いた思いを強めたり改めたりしながら、授業を行ってきました。

 

その中で感じたのは、「集団授業をするにあたっての学習目標」は「地味」なものになるのだろうということです。(あくまで英語の集団授業ですが。)なぜなら、外国語学習は結局のところ、

  1. 単語・熟語をおぼえて
  2. 文法をおぼえて
  3. それらが実際にどう使われているかをおぼえる

ことなしにははじまらないからです。

 

(なぜいきなり学習目標の話かというと、それはこちらのとおりです。)

  

昨今は上記の3つのさらに先にある「運用」に注目が集まっている、もしくは、「運用」を通じて上記の3つを身につけていくのがよいという考え方が支持されているような感じがします。が、現場の先生たちは「そうは問屋が卸しませんぜ」ということを、もうずっと前から実感してきているのではないでしょうか。

 

3つしかピースをもっていない人にLEGOをやらせても、限界があるじゃないですか、出来上がったものに。まず、手持ちのピースを増やしてあげないと。そしてできることなら、汎用性の高いピースから増やしてあげないと。

 

汎用性が高いピース。それが、いわゆる「検定教科書の内容」です。「学校でやる英語はあくまで学校英語で、大学受験以降は役に立たない」的なことをいう人は最近はもうあまりいないと思います(と私が勝手に決めています)。違うんで。フツーに。

  

なので、「教科書をしっかり教える」ことは大事だと私は思っています。「教科書 “で” 教える」レベルにステップアップできるに越したことはないのですが、それはだいたい以下の2つの理由で多くの先生にとってはちょっとした夢になっているのではないでしょうか。

  1. 授業時間数が足りない
  2. 生徒の習熟度が「教科書 “で” 教える」レベルには足りない

 

1は説明不要ですが、2は、つまり、「LEGOの手持ちのピースが少なすぎる」状態だということです。この1と2が現実としてあると、必然的に「教科書をしっかり教える」ことが優先事項となり、さらにその中でも一層汎用性の高い内容が最優先事項となります。この最優先事項というのが先に述べたこの3つです。

  1. 単語・熟語をおぼえて
  2. 文法をおぼえて
  3. それらが実際にどう使われているかをおぼえる

 

地味です。

 

Critical Thinking、大事です。多文化理解、大事です。積極的にコミュニケーションを図ろうとする姿勢、大事です。こういうピースもちゃんと検定教科書の中に入っています。でも、英語の教員としては、そういったことよりも、「単語を知らないと何もできないよね!」とか「主語の直後には動詞が来るんだよ!」とか「日本語を直訳しても英語としては意味が通じないんだよ!」いうことを優先させなければいけない局面があって、というか、そういう局面が大半だったりするんですよね。

 

私の感覚だと、学年の7割~8割くらいは、この地味な学習を必要としている気がします。

 

そんなわけで、私が個人的にいくら21世紀型学習的なものに関心を持っていても、最大多数の生徒の最大幸福を実現しようとして学習目標を設定すると、結果として、けっこうな確率で昔ながらの授業っぽい授業になるといえばなります。毎回の授業でやることは

  1. 教員が導入
  2. 生徒が活動
  3. 教員が説明
  4. 生徒が練習
  5. 教員がフィードバック
  6. 生徒がもっと練習

でしかないので。

 

この過程の中で「わかった!」と生徒が思えると、これが意外とつまらなくなくなって、乗ってきてくれるようになるので、私としてはそこに望みをかけながらやるしかありません。もっと「楽しく」できないか、一応あれこれしようとしているのですが、なかなかいい方法に出会えなくて、結局「『楽しくて何も身につかない授業』よりマシ」だと思って(言い方)自分を鼓舞しながらこのやり方を続けています。

 

あとはもう、生徒を学習内容につなぎとめておくための「雑談と見せかけて本論を語る話術」と「コミュニケーション能力」を日々磨くしかないですよね。(何の話だ。)

 

今年は定期的にブログを更新して、それを腰を据えて考える機会とできるといいなあ…

 

それではまた次回まで。Happy teaching, my friends!!

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