先生のためのアイディア帳

効果的な指導法やエトセトラについて

「情報モラル教育」の目標を具体化しようとしてみる

こんにちは。

 

今日『学校アップデート』を読んでいたところ、デジタル・シティズンシップに関係し得る話題が少し出てきていたので、これを機に重い腰を上げて、(私に有用な)情報をこちらにまとめることにしました。

 

というのも、ICT後進校である我が勤務校は、休業期間中にいろいろなもの(濁す)に背中を押されて「とりあえず教員も生徒もICTを使ってみる」という段階にやっと片足を入れたくらいなので、デジタル・シティズンシップのような、「ヴィジョン」みたいな、「方針」みたいな、そういうものを持っていないんですよね。まして、そのヴィジョンが実現されるようにそれを具体化したものもない。

 

「そういう大きい話、今は要らないんで!目の前のことで忙しいんで!」と言いたい向きもあるとは思うのですが、私がこれまで研修で行かせてもらった国内外の学校(←もちろん成功例)は、どこもちゃんと「ヴィジョン」から始めていました。要は、「教育へのICTの活用」のように、前例のないことをやろうとする場合、教育方針に根差した確たる「ヴィジョン」を持っていないと、迷走するんですよね、たぶん。

 

と書いていて急にこのTED Talk(TEDx?)を思い出しました。「なぜそれをするのか」がないと人は動かないのだ、というやつです。「何をするのか」「どうやってするのか」が先に来ていてはダメだ、と。(余談です。)

 

www.ted.com

 

そんなわけで、私の勤務校でそのまま使えそうなデジタル・シティズンシップ的なもの(できれば生徒にとっての具体的な行動目標になるようなもの)を作りたいと、4月からずっと思っていたのでした。

 

ちなみに、『学校アップデート』では、文部科学省の用語に統一しているからだと思いますが、「情報モラル」というふうに言っていますね。これ、知らなかったと言ったら怒られそうですが、知りませんでした。

 

第一に参考にするのはこちらです。

「『教育の情報化に関する手引』検討案」の「第5章 情報モラル教育」

www.mext.go.jp

 

まず、「情報モラル」の定義を見てみましょう。

 

「情報モラル」とは

学習指導要領では、「情報社会で適正な活動を行うための基になる考え方と態度」を「情報モラル」と定め、各教科の指導の中で身につけさせることとしている。 

  

「日常モラル」と「情報モラル」

情報モラル教育の目標は、道徳などで扱われている「日常生活におけるモラル(日常モラル)の育成」と重複する部分が多く、これは情報モラル教育の基本となる態度の育成に欠かせない。

しかし、日常の社会では、個人、家庭、地域社会と順に経験しながら、ゆっくりと時間をかけてその関係を理解していくことができるのに対し、情報ネットワークでは、端末を利用したコミュニケーションを開始するとすぐに、見えない人とのつながりや社会との接点が同時に生じる部分が異なる。従って、情報端末を利用するにあたって、危険回避を行うための具体的な教育が必要な一方、情報化社会の特性やネットワークの理解を深め、自分自身で正しく活用するために的確な判断ができる力を身につけることが必要である。

(下線:私) 

  

次に、「情報モラルの指導」がどう説明されているか見てみます。私は中学校の教員なので、「中学校における指導内容」という部分を見てみます。

 

ここで名前が挙がっているのは、社会、保健体育、技術・家庭、外国語、道徳という5教科、および総合的な学習の時間と特別活動です。道徳が一番詳しいので、逆に(逆に?)それ以外を見てみましょう。以下、私による雑な要約です。(※特別活動に関しては、文章が意味不明瞭で要約できなかったため、引用しています。)

 

社会

公民的分野の内容では、内容として情報モラルの大切さを学ぶ。また、資料や情報を活用する学習活動では、著作権等に関する倫理的な指導が可能。

保健体育

コンピュータの心身への影響について理解させる。

技術・家庭

デジタル化された情報の扱い、および、情報通信ネットワークの仕組みに関わる情報モラルの指導。

外国語

海外との交流学習や情報通信ネットワークの使用を通じて、生徒一人一人が主体的に世界とかかわっていこうとする態度を育成することが可能。

総合的な学習の時間

情報活用の実践力の育成を伴うような実践事例を紹介する。

特別活動

教科の指導では難しい、安全・安心に関する分野の指導をスポット的に取り扱っている事例を紹介する。

 

いやー、もうどうしてもこちら↓に似た状態になります。

endohiromichi.hatenablog.com

 

「特別活動」…スポット的に…何なの…。頭の中で黒塗りにしても、残った部分が結局意味不明瞭だと、「あれ?もしかしてわかってほしくて書いてるわけじゃないのかな?」と思ってしまいます。この文書に限らず、日常的に上から降ってくるお知らせはこの手の調子のものが多くて、わかりやすい文章しか理解できない私にとってはハラスメントです。(と言いながら、自分がわかりやすい文章を書いている自信はない。残念!)

 

さて。気を取り直して道徳を見てみます。こちらはそのまま引用します。

 

(略)情報モラル指導モデルカリキュラムに示されている「情報社会の倫理」、「法の理解と遵守」、「安全への知恵」、「情報セキュリティ」、「公共的なネットワーク社会の構築」などを踏まえ、個人情報の保護、人権侵害、著作権等に対する対応、危険回避などネットワーク上のルールやマナーなどが考えられるが、単に知識や対処を教るのではなく、生徒が考えたり、話し合ったりする時間を設定しながら自ら判断し、対処できる力や態度を身につけることが必要である。

 中学校の段階での具体的な目標としては、次のような項目が考えられる。

 

  • 情報社会への参画に責任ある態度で臨み、義務を果たす
  • 情報に関する自分や他者の権利を理解し尊重する
  • 情報社会のルール・法律を知り、遵守する
  • 情報に関する危険を予測し被害を予防する
  • 情報を正しく安全に活用するための知識や技術を身につける
  • 自他の安全や健康を害するような行動を制御できる
  • 情報セキュリティに関する基礎的基本的な知識を身につける
  • 情報セキュリティの確保のために、対策・対応がとれる
  • 情報社会の一員として公共的な意識を持ち、適切に判断し行動できる

 

これでよくないですか? これを中学校の教育課程共通の目標とした上で、上述の教科や領域に割り振った方が、すっきりするような気がするのですが。

 

欲を言うと、すっきりさせられるものはすっきりさせたい派の人間としては、もうちょっと手を入れたいですね。繰り返しや曖昧さを省いて、こうするのはいかがでしょう。

 

 ≪社会参画≫

  1. 情報社会の一員として公共的な意識を持ち、適切に判断し行動できる

 ≪ルール≫

  1. 情報に関する自分や他者の権利を理解し尊重する
  2. 情報社会のルール・法律を知り、遵守する
  3. 自他の安全や健康を害するような行動を制御できる

 ≪リテラシー

  1. 情報を正しく安全に活用するための知識や技術を身につける

 ≪セキュリティ≫

  1. 情報セキュリティの確保のために、対策・対応がとれる

 

ここまで来ると、ISTEのdigital citizenshipとの類似性も見えてきます。というわけで、第二の参考資料はこちらです。

 

https://id.iste.org/sf-images/edtekhub/digital-citizen_infographic_final.png?sfvrsn=2&_ga=2.211063381.1710701991.1597912055-2098212482.1590024528

 

以下の9つは、このポスター中の右半分の訳です。いずれも、「よきデジタル市民は」に続く文言です。原文にはない「ICT」という語を使いながら訳しました。 “digital” は直訳では 下の辞書の第7定義にある“electronic”(電子技術の)なのだとは思いますが、それよりは「ICT」の方が近いと感じたので。

 

www.merriam-webster.com

 

よきデジタル市民は

  1. あらゆる人が平等にICTを利用できることを支持する
  2. オンライン環境において、他者を尊重し、決していじめ行為をしない
  3. オンライン環境において、人の作ったもの、身分、財産を盗んだり傷つけたりしない
  4. ICTを用いてコミュニケーションをするときは、適切な判断をする
  5. よりよく学ぶためにICTを活用し、変わり続ける技術に遅れを取らない
  6. オンラインで何かを購入するときには、責任をもって決断し、個人情報を守る
  7. オンラインのあらゆる発言の場で、基本的人権が守られることを支持する
  8. 有害な他者から個人情報を守る
  9. ICTを使うことによる精神的・肉体的なリスクを積極的に減らす

(訳:私)

 

こちらのポスターを実際に使ってみたいという方は、以下のリンクから10ドルで購入できます。(ISTEの関係者でもなんでもないのですが、こういう文脈がある以上、違法な複製を防ぐ方向に話を持っていくのが道理かと…)

 

id.iste.org

 

 無料ダウンロード可のものですと、ISTEはdigital citizenshipに関しては別のインフォグラフィックも出していますので、あわせてご紹介しておきます。

https://cdn.iste.org/www-root/PDF/ISTE_DigCitCommit_Poster_08-2019_11x17_vf.pdf?_ga=2.153452152.1710701991.1597912055-2098212482.1590024528

f:id:ednotes:20200822192013j:image

 

こちらは5項目です。それぞれの項目を訳したいのはやまやまなのですが、“I’m” に続く英語は、深いことを1語でバシッと言っているのが標語としてのミソで、ここをあーだこーだと説明して書いてしまうともったいないので(思い入れ)、その下の文のみ訳したいと思います。

 

  1. I’m inclusive. 私は、尊敬と共感をもって、他の人に接します。
  1. I’m informed. 私は、インターネット上の情報が正確か、誰が何のために発信したか、信頼できる情報か、判断します。
  1. I’m engaged. 私は、ICTをよりよい学びと暮らしのために使います。
  1. I’m balanced. 私は、自分の時間を大切にし、計画的にオンラインとオフラインの活動を行います。
  1. I’m alert. 私は、自分と他の人がどちらも安全でいられるようにします。

(訳:私)

 

文科省の道徳の文言と、ISTEのポスターとインフォグラフィックの文言。似たことを言っている感じがだいぶします。この3つを叩き台にして、各学校が生徒に合った内容・言い回しに整えれば、「できたー!(ビストロSMAP風に)」になりそうではないでしょうか。

 

文科省の道徳の文言は「生徒にわかりやすい具体的な目標」としては10点満点で3点くらいだと思うので、これをもっと言い換えていく必要があって、そのときにISTEのポスターとインフォグラフィックの文言はとても役に立つと思うのです。

 

というわけで、私にとって有用な情報がまとまったので、今日はここまでとしたいと思います。それではまた次回まで。Happy teaching, my friends!!

 

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授業担当コマ数についての小言

こんにちは。

 

「当事者の方が声を上げてくれないと変わらない」とたかまつななさんがおっしゃっているので、声を上げてみます。(単純)

  

教員の労働環境の悪さ(語彙)に関しては、複数の多様な観点(歴史、文化、財政、少子化、大学入試、学歴社会など)から論じられると思います。が、このエントリーでは比較的具体的な「授業担当コマ数」という観点から、小言を少し。(大きい話をして虚しい気持ちになるのが耐えられないので…老化…。しかも結局長くなってしまいました…老化…)

 

手始めに、文部科学省が教員1人あたりの授業時数(担当コマ数)を調査した結果が何かの報告書に載っていないかと思って探してみました。むー。少なくとも私はネット上では見つけられませんでした。

 

以下の2017年6月7日のベネッセの記事には「文部科学省が10年ぶりに行った、小・中学校の『教員勤務実態調査』の結果」とあるので、もっとちゃんと探せば出てくるのかもしれないのですが、ここでは、あっさり断念して、この記事を引用して済ませてしまいます。

 

benesse.jp

中学校は一人の負担が増える

 

とりわけ中学校が大変なことも、数値の奥から浮かび上がってきます。

 

中学校教員の週当たり授業担当コマ数は、21~25コマが49.9%、26コマ以上も含めると70.7%です。30年ほど前でさえ20コマを超えると「きつい」と言われたものですが、もうそんな泣き言さえ許されない状況が当たり前になっています。

 

部活動指導も、確かに激務の要因です。土日の業務時間が2時間10分と、10年前に比べ倍増しています。先生の84.4%が顧問をし、週の活動日は「6日」が49.1%、「7日」も15.1%と、3人に2人が満足な休みをとれていません。

 

これも、中学校1校当たりの教員数がそれほど増えず(2006<平成18>年比1.6人増の24.2人)、一人にかかる業務が集中していることが背景にあります。文科省は、単独で指導や対外試合の引率ができる「部活動指導員」を制度化しましたが、教員の負担「軽減」になるとはいえ、根本的な解決策になるわけではありません。

(下線:私)

 

なるほど。

 

ちなみに、中学校の標準授業時数(生徒が受ける授業の数)は以下の通りです。

 

「中学校の標準授業時数について」(平成27年7月16日中央教育審議会初等中等教育分科会資料3-3)

https://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/giji/__icsFiles/afieldfile/2015/11/09/1363415_006.pdf

 

この資料ではいつまでが「旧」でいつからが「現行」なのかすらわかりませんが、とにかく、現在の公立中学校では1週間の授業時間数は29です。(平日6時間授業、ただし内1日のみ5校時で終了で、6×5-1=29。)

 

では、1人ひとりの教員の授業担当コマ数はどんなふうになるでしょうか。

 

私を例にとってみます。担当教科は英語(表中の「外国語」)で、1年生を担当しているので、1クラスあたりの授業時数は週4コマ。勤務校では1学年は1組から5組までの5クラスあり、私が1人で担当してるので、英語の授業担当コマ数は週20になります。そして、中1の担任兼担当ということで、そこに道徳(1)、特別活動(1)、総合(1.4)が加わるので、合計の授業担当コマ数が週23になります。校務分掌の会議も入れると、週24コマが埋まっています。ということは、空きコマは週に5つ、1日平均1つということになります。

 

この1日平均1つの空きコマで行う(ように期待されている)業務は何でしょうか。「文部科学省教員勤務実態調査-業務の分類」をそのまま写してみます。(該当ページのスクリーンショットも貼り付けますが、判読不可能な場合用に。)

f:id:ednotes:20200819213913p:plain

文部科学省教員勤務実態調査-業務の分類

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/052/siryo/__icsFiles/afieldfile/2015/02/18/1355024_4.pdf(p.4)

 

【児童生徒の指導に関わる業務】

(※表中の「朝の業務」「授業」はここではカウントしません。)

  1. 授業準備 
  2. 学習指導
  3. 成績処理
  4. 生徒指導(集団)
  5. 生徒指導(個別)
  6. 部活動・クラブ活動
  7. 児童会・生徒会指導
  8. 学校行事

【学校の運営にかかわる業務】

  1. 学校経営
  2. 会議・打ち合わせ
  3. 事務・報告書作成
  4. 校内研修

【外部対応】

  1. 保護者・PTA対応
  2. 地域対応
  3. 行政・関係団体対応

【校外】

  1. 校務としての研修
  2. 会議

【その他】

  1. その他の校務
  2. 休憩・休息(45分)

 

空きコマ50分以内で、上記の業務の内その日に終わらせなければならない部分をすべて終わらせる。若者が言うところの「ムリゲー」です。もしくは、コピーロボットが2体いてくれたらできるかもしれません。(私が授業準備、1人が担任業務、もう1人がその他すべて、という役割分担。)

 

これを読んでくださっているあなたが学校の先生であれば、はたまたそうでなくても、これが「ムリゲー」であることは自明かと思います。ただ、自明なあまり、このことについてそれ以上考えるのをやめてしまっているという場合もあるかもしれません。ここから先は、あえてしつこく「なぜ50分以内で上記の業務を終わらせることが不可能か」について考えて書いてみたいと思います。

 

重要なのは、上記1~18のほとんどが「『対人間』業務」だという点だと私は思います。

 

「2. 学習指導」で考えてみると、ある生徒が質問を持ってきたとすれば、それに答えるだけで15分かかることもあります。英語で言うと、通常の授業に関する質問以外にも、入試用の英作文指導や検定試験の模擬面接は、1人15分くらいかかります。もちろん、この所要時間は指導内容や生徒の習熟度によっていくらでも変わります。また、学力不振の生徒たちをまとめて指導するとかいった場合には、まるまる1コマ分かかることもあります。(「教員がただそこについている」という必要がある場合もあるので。)

 

「5. 生徒指導(個別)」「6. 部活動・クラブ活動」に関しても同様です。ただ単に指導をするだけでも一定の時間がかかりますが、さらにそこで対処すべき問題が生じたとなれば、生徒本人とのコミュニケーションに加えて、管理職、学年主任や生徒指導担当、保護者とのホウレンソウが必要な限り続くので、それに必要なだけの時間がかかります。

 

あわせて強調されるべきなのは、この「『対人間』業務」の「人間」には「同僚(自分以外の教職員)」も含まれるということです。たとえば、「4. 生徒指導(集団)」「5. 生徒指導(個別)」「6. 部活動・クラブ活動」「7. 児童会・生徒会指導」「8. 学校行事」「10. 会議・打ち合わせ」などは、管理職、学年主任、一緒に組んでいる先生によって、その業務にかかる時間が大きく、大きく、大きく変わってきます。(3回言ってみました。)

 

もし「何でも腰を据えてみんなで相談したい」タイプの先生と働くと、時間はいくらあっても足りません。一方、「立ち話でも必要な情報のやり取りと意思決定ができる」タイプの先生と働くと、大幅に時間が節約されます。ただし、後者には職人技みたいなものが要求されて、教員歴、コミュニケーション能力、職員室での人間関係といった諸々の条件が相手側にも自分側にもいい感じに揃ったときに初めて可能になるかと思います。「腰を据えて相談すべき案件」を立ち話で済ませたばかりに結果として3倍の時間と労力を費やすことになった…みたいなこと、20代の頃にはあった気がします。(嫌なことは忘れてしまうのでおぼえてはいない。)

 

他にも、いわゆる「働き方」に関して、管理職、学年主任、一緒に組んでいる先生がどういう意識でいるかも、自分の忙しさに大きく影響します。業務時間内でできる程度を超えないように業務量を調整できる先生と一緒に働くか否かで、サービス残業時間が果てしなく変わります。学校や先生によっては、業務時間外に会議を設定することがふつうになっていたり、また、そもそも業務時間外のサービス残業ありきで物事を考えていたりするものです。

 

というわけで、まとめると、「教員の業務は『対人間』業務であるため、個々の教員の力では時間のコントロールが難しい。よって、1日空きコマ1つでは業務時間内に業務を終えられません」ということです。

 

「業務時間内に業務を終える」にはどうしたらいいでしょうか。「授業担当コマ数」を減らして、「授業以外の業務をするためのコマ数」を増やすことが必要かと私は思います。つまり、見た目としては「空きコマを増やす」ということなのですが、大切なのは、「個々の教員が自分でコントロールできる時間を増やす」ということです。私の今までの経験では、私が「自分でコントロールできる時間」というのはほとんど17時前後以降の「業務時間外」でした。それですら、右から左から声がかかって、思うようにならないことも珍しくありませんでした。授業時数が週16コマほどだった年もあったのですが、空きコマに分掌の打ち合わせ、説明会・説明会準備、学校案内、教科会議などが入り、いっそ授業をしていた方がよほど業務的負担が少なかっただろうと感じていました。そういえば、その年は3つの学年を担当していたので(中1・高1・高3)、授業準備も今より大変でした。

 

話がグルグルしますが、ではこの「個々の教員が自分でコントロールできる時間を増やす」ためにはどうしたらいいかというと、それはやっぱり「空きコマを増やす」ところから始めるしかないと思います。そして、空きコマの内のいくつかを、完全な「自分が使いたいように使える時間」として決めてしまうのがいいのではないでしょうか。

 

この件についての解決方法には、浜田博文先生が(Twitterでは)数年前から何度か言及されています。(冒頭で引用したベネッセの記事も同様の論調でした。)

 

「教員数の増大」は、「働き方改革」がまともに成功するためのカギではないかと私も思います。先につまらないコピーロボットのジョークを書きましたが、主旨は同じです(えっ?)。それが実行されるためには、政府や地方自治体が学校教育につける予算を増やす必要があり、今のように社会全体が不況を経験している状況では特に、楽観的になれないのが残念です。でも、長期的なプランのある政府や自治体であれば、不可能なことではないはず。

 

上でまとめたように、教員の業務はほとんど常に「人間」相手に行われているので、コントロール不可能な要素がそこここに存在しています。その「コントロール不可能性」を考慮した上でなお業務時間内で業務が終わるように文科省教育委員会が教員数を設定してこそ、実現可能かつ意味のある「働き方改革」が見えてくるのではないでしょうか。

 

まともな増員をせず、今いる人員に今ある問題を今ある労働環境下で変えろというのは(現状)、私が感じている限りでは、無理です。

 

何とも言えない感じで終わってしまいました。さ!それではまた次回まで。Happy teaching, my friends!!

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【COVID-19】1学期をふり返る【中1担任・中1英語・ICT】

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Photo by Annie Spratt on Unsplash

 

 こんにちは。

 

タイトルの通り、1学期をふり返ってみたいと思います。熱中症対策と感染症対策とで他にすることもないので、ようやく重い腰を上げるに至りました。怠惰。(忙しさしかない学期中に参考文献に当たりながら日々のふり返りや先々の指導計画をしておられるロカルノ先生ややっちゃえ先生のような先生方は、一体何がどうなっているのか(日本語)想像もできません。)

 

 

まずはWikipediaより「日本における2019年コロナウイルス感染症の流行のタイムライン」です。(こちらを編集してくださっている方々、本当にありがとうございます。)

 

私の勤務校に直接関連したのは、以下の3つでした。

  1. 2020年2月27日、内閣総理大臣より、3月2日から春休みまで国公私立を問わず全国の小学校・中学校・高等学校・特別支援学校の一斉臨時休校を要請する方針が示され、3月16日時点までには、ほぼすべての学校が休校要請に応じた。
  2. 4月7日、日本政府は新型コロナ特措法32条に基づき、7都府県(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府兵庫県、福岡県)を対象に、4月7日から5月6日までの1か月間に期間を限って「緊急事態宣言」を発出した。
  3. 5月4日、日本政府は全国を対象に発出中の緊急事態宣言の期間を5月31日まで延長することを発表した。

 

そんなわけで、6月1日(月)から「分散登校×半日登校」(生徒側からすると週2日登校)が始まりました。2週目には「分散登校×半日登校」(生徒側からすると週3日登校)になり、3週目には「全員登校×全日登校」(生徒側からすると週5日登校)となりました。

 

担任業務

この数週間は実質的には「新学期のオリエンテーション期間」ですので、学活で行ういろいろな作業があります。私は中学1年生の担任なので、なおさら。それが今年は「COVID-19対応版」ということで、変更になったり簡略化されたり中止になったりしました。

 

ただ、この辺りの担任業務に関しては、分散登校のために一度に対応しなければいけない生徒の数が半減したおかげで、整然と進めることができた気がします。

 

加えて、これは公立中学校全体の傾向なのか、私の勤務校の特色なのかわかりませんが、何に関しても副担任の先生方が担任と交代しながら動いてくださったのが、非常に助かりました。副担任の先生が動いてくださることで私にも空き時間ができたので、その間に他の担任の先生方がどんなふうに生徒に話をしていらっしゃるか見て、それを参考にして自分のクラスの学活を計画することができました。私は今の勤務校は初年度なので、学校のルールから教室の場所まで、わからないことしかありませんでした。なので、「自分のクラスが登校しない日がある」とか「自分のクラスに行かなくてもいい時間がある」というのは、本当に本当にありがたかったです。

 

1週目と2週目は午後が「生徒のいない時間」だったので、そこで、その日あったことの共有や翌日の準備ができたのもすごくよかったです。普段はそういうことができるのは勤務時間外ですからね。毎日が半日登校だったらいいのに…(あっ、心の声が!)

 

教科指導

英語の授業の方は、うーん、今ふり返ってみると、うーん、よかったかもしれません。最中にあったときには「ちょっときついぜ…」と思っていたのですが、まあ、私の甘えだったかと。

 

ちょっときつかったのは、学校再開後の第1、2週目の両方がALTが入る授業だったからです。勤務校がある自治体ではALTが巡回指導を行っているため、ALTに授業をやってもらうタイミングを選ぶことができません。私はALTが来てくれるのであれば彼/彼女に最大限活躍してもらいたいので、そうするための内容とオリエンテーション期間でやりたい内容とを両にらみしながら授業計画を立てるのは、少し骨が折れました。分散登校の結果として各クラス間で授業のタイミングや時間数が大きくズレたりしたのも、小さな悩みの種ではありました。

https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/school/content/files/global/honbun_shiryou.pdf

1JET-ALT配置拡大、Non-JET ALT配置時数の拡大(提言1)平成12(2000)年度から島しょ部の都立高校のみに配置してきたJET-ALTを、平成25(2013)年度は新たに7校に5人配置し、平成26(2014)年度は、それを100校100人にまで拡大した。平成27(2015)年度は更に189校200人に拡大し、全都立高校及び都立中等教育学校定時制課程単独校を除く。)に配置した。これらのJET-ALTは、各学校で英語のティーム・ティーチングの授業や、部活動・学校行事等における交流を通して、生徒のコミュニケーション能力の向上と異文化理解の深化に取り組んでいる。また、平成27(2015)年度から、高校等に配置されているJET-ALTを、都内公立小学校・中学校・特別支援学校(27年度は100校、28年度は200校)に派遣し、外国人との文化交流を促進する事業を実施している。さらに、JET-ALTの配置拡大とあわせて、平成26(2014)年度以降、在京外国人を活用したNon-JET ALTの配置時数も拡大している。 

 

あとは、感染症対策が最優先となるためにゲームやペアワークなどのアクティビティができない、ということもありました。が、私はもともと「とりあえず生徒がアクティブに見えるだけのアクティブ・ラーニング」(言い方)には興味がないので、そのせいで大きく困りはしませんでした。それでも、7月に入ってただ7月に入ったからという理由で勝手にペアワークを解禁したところ、生徒たちの楽しそう感が予想以上にあったので、「お互いに向かって何かをしたり言ったりするだけでもよい刺激になるのだ」ということは思いましたが。「生徒たちの楽しそう感」と「英語力の向上」とは必ずしも相関関係にないので、アクティビティは必要なときにだけするようにしています。

 

それから、学習内容に関してももちろん大きな変更がありました。4月、5月が休校になり、6月の前半も分散登校とALTとのTTとでゆっくりのスタートになったため、1学期中では一般動詞の疑問文とその答え方(”Do you sing?” --- “No, I don’t.”)までしか進みませんでした。通常であれば、1学期中に一般動詞の三人称単数現在形や疑問詞を用いた疑問文まで終わったりするので、それを考えると遅れています。ですが、ラッキーなことに、中学1年生はここでの遅れを今年中に取り戻せなくてもかまいません。この学年はおそらく来年も私がメインで担当するので、来年もかけてジワジワと「通常の進度」に追いつけば十分だと思っています。「外国語活動」のテンションから「教科・外国語」に切り替えるのだけでも丸1か月くらいかかると思うので、ここで生徒たちをギュウギュウ焦らせなかったのはよかったのではと思っています。(ノートの取り方の指導1つとっても、1時間半かそれ以上かかりますよね。)

 

というのも、生徒たちは小学校から「英語」をやってきているのですが、本当に、学校によって、また、生徒によって、習熟度がバラバラなんです。特に、「書く」段になるとますますバラバラになります。アルファベットが書ける書けないの差があるのはもちろん、スペリングを正しくできるできない、文を書くルールを守って書ける書けない、など、英語にまつわる様々なルールを「書く」という動作と結びつけられるかどうかという問題がまずあります。そしてさらには、冠詞の有無、動詞の選び方、語順、といった、より語学的な面にかかわる問題もあります。こういったことは、生徒たちが書いてみて初めて教員が「この生徒はできる」「この生徒はまだできていない」と確認できるものです。生徒が「イェス、アイドゥー!」とか元気にしゃべっているのを聞いて安心してサクサク先に進んでしまうと、定期考査になって「おまえ、まじか…」と教員が慌てることになります。

 

どうなんでしょう。休業中に対面の授業と同等の指導ができて、休業明けにはそれをふまえて授業を進めることができた、という先生方は実際いらっしゃるのでしょうか。特に、中1英語でそれをするってものすごく難しくないですか? 中2だったら、新出単語を大量におぼえさせるとか、初出の長文を複数暗唱させるとか、Google Classroomを使って英作文やプレゼンテーションをさせるとか、既存の業者のサービスを使って確認テストを受けさせるとか、休業中にできることが何かしらあると思います。でも、中1で何ができますか? アルファベットもまだ間違えたりする、ましてフォニックス(文字と音の結びつき方のルール)も知らない生徒に、何をさせられますか? 「自宅学習?何それうまいの?」な生徒も少なくありません。共働きの家庭、シングルの家庭もたくさんあります。結局、私は、休業期間は「授業時数ほぼゼロ」とみなして6月からの授業を計画・実施しました。それでよかったと思います。

 

そうそう、とは言っても、フォニックスに関しては、1学期で「音読み(おとよみ)」の基本をすべて終え、ちょっとした応用である「サイレントe」もやることができました。これにはとても満足しています。なぜなら、これだけわかっていれば、生徒たちはこれからちょっとやそっとではスペリングに困らないからです。もちろん、これから例外と呼ぶには納得がいかないほどの数限りない例外が出てきて、生徒たちは日々「また例外かよー」となることになります。それでも、フォニックスの基本やサイレントeを知っているのと知らないのとでは英語を読んだり書いたりするのに天地ほどの差があると私は思っています。とりわけ、これまで文字を通じて英語に触れてこなかった生徒たちには、フォニックスを学ぶメリットは大きいかと。(すでに文字を通じて英語に触れている生徒は、何となく文字と音とのつながりを自分で発見している場合が多いです。)

 

そのようなわけで、COVID-19に翻弄された1学期でしたが、英語の授業および学習内容に関しては、総じて不満はありませんでした。それもこれも、中1全員を私が1人で教えているからこそ、と言ってしまえばそれまでなのですが。複数の教員がチームになって1学年を教えている場合は、自分がいいと思うようにできないことが必ず出てきますので。前任校でも前々任校でも1学年を他の先生方と組んで教えていたので「これ、やりたくないよー(これ、生徒にやらせたくないよー)」と思いながらもやら(せ)ざるをえなかったことはたくさん、本当にたくさん、ありました。自分1人ですべてを決めてやっていくことの責任は重大ですが、自分が学習効果が高いと確信していることをやれる裁量権があるというのは、なんというか、いいです。

 

遠隔授業についての雑感

休業期間中には、児童・生徒・学生の「学習機会の保障」というテーマに注目が集まり、ICT導入・活用推進派の私は前向きな気持ちで状況を見ていました。

https://www.mext.go.jp/content/20200618-mext_syoto02-000008021_6.pdf

 

2018年まで自分が学生として対面授業におけるICT機器の活用だけでなく、遠隔授業でのICT機器の活用も経験していましたので、「こうもっていけばできる」という仕組みづくりとその運用に関するイメージが具体的にできていたからです。

 

しかし。それが中学1年生に応用できるはずはないんですよね。考えてみれば考えるまでもないことです。自主的に大学院に通ってきている社会人学生と、義務教育の真っただ中の中学1年生が、同じように遠隔授業を受けられるはずがありません。コンピューター利用歴、一般的・専門的リテラシーなどが違っているのはもちろんのこと、さらにずっと大事なのは、中学1年生の大半はまだ「自律的な学習者」になっていないということです。理由はひとえに「自律的な学習者になっていけるような指導をまだ受けていない」から。

 

 

生徒たちが一度「自律的な学習者」になってしまえば、学習効果・教育効果の高い遠隔授業を行うことは可能だと思います。ただし、まだそうなっていない生徒たちにデバイスや資料やワークシートを与えて「さあ、これをやるんだよ」とやってしまうと、彼らにとっての自宅学習時間は「失われた学習機会」ということになってしまうのだと思います。これは今話題になっている「オンライン大学1年生」問題とも関連するかもしれません。

 

 

今ただ思いついたままに書いているのですが、生徒たちが「学び方を学ぶ」段階、すなわち「自律的な学習者へ育っていく」段階においては、同じ空間に指導者や他の学習者がいて、多様なインプットやフィードバックがオンタイムである環境がよいのかもしれません。(「多様なインプットやフィードバックがオンタイムである環境」というのは必ずしも「対面授業」である必要はないと思います。)一方、繰り返しになりますが、一度生徒たちが「自律的な学習者」になってしまえば、指導者や他の学習者がいつも周りにいなくても、実りのある学びができるようになるのではないでしょうか。

 

ただ、上に紹介してある初等中等教育局からの資料には

国際的にも高く評価されている「日本型学校教育」は、教師が学習指導のみならず生徒指導等の面でも主要な役割を担い、児童生徒の状況を総合的に把握し、知・徳・体を一体的に育んでいる。特に初等中等教育は、学校という場や地域社会で様々な集団活動を行い、多様な他者と関わり、対話することを通じて人を育てる営みであることに留意する必要がある。 

とあります。学習指導だけではダメだと。「生活指導等の面でも主要な役割を担」うとなれば、それは、対面の環境が望ましいという方向に議論が傾くのかと思います。(一般論&感情論的に)

 

図らずも長くなりました。今日もお付き合いいただきありがとうございました。それではまた次回まで。Happy teaching, my friends!!

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Google Formsを使って小テストをしたらいろいろwin-winだった話

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8月!半ば!(夏休みが終わっていくことへの悲しみが言葉にならない。)

 

こんにちは。

 

1か月ほど前に、私史上初めてGoogle Formsを使った小テストを実施しました。「小テストの作成・採点・成績処理にかかる労力」「フィードバックの早さ」「小テストを受けることを通じて生徒たちが得る学び」を総じて考えてみて、成功だったと思います。

 

そんなわけで、本日はその一部始終のご報告です。

 

【準備】

1.この小テストのねらいを明確化する

 この小テストは、1学期期末考査の「やり直しテスト」と銘打って、考査返却日の次の授業で実施しました。1学期期末考査をやり直すことによって学習事項がより正確に定着すると考え、それをねらいとしました。また、考査でもふるわなかった生徒たちに関しては、彼らが範囲になっていた事項を少しでも思い出すということをねらいとしました。

 

2.小テストの形式を決定する(ツール)

 もともとは、紙で小テストをしようと思っていました。が、150人分の採点や成績入力はそれだけで時間をとりますし、ましてや定期考査の採点と成績入力が終わったばかりの我が身に更なる苦行を強いるほど自虐的な性格でもないため、「G Suiteを利用できないかしら…」と思い始めました。Google Classroomの授業での利用を始めているタイミングでもあったので、技術的には可能だという見込みもありました。G Suiteで小問集合型の小テストをするならGoogle Formsが最も便利なので、「G Suite、いける」と思ったと同時にGoogle Formsを使おうと決めていました。

 また、ひとたびGoogle Formsで小テストをしようと決めた後も、他のメリットが次々に発見されて、Google Formsを使う意義が自分の中でますます確かになっていきました。

  • 「回答を送信」した次の瞬間には「結果」の得点を見られる
  • 「結果」の得点を見た次の瞬間には模範解答を見られる
  • 何度も繰り返し同じ小テストを受けられる(すでに送信した回答を編集すること、まったく新しい回答を送信すること、いずれか、もしくはどちらも、を教員が設定できます。)

この3点は、今回私がやったタイプの小テストが学習効果を持つために必要な要素です。というのも、中学1年生の段階では、英語は「暗記科目」だからです。なので、小テストの実施方法に「おぼえるべきことを正確におぼえるための仕組み」が備わっていることが理想であると言えます。この「おぼえるべきことを正確におぼえるための仕組み」とは、すなわち「効果的な反復練習の仕組み」で、具体的には「【練習→フィードバック→やり直し】のループ」です。ただ、教員が人力で採点を行うのでは、時間がかかりすぎて、この理想の実現はまず不可能です。Google Formsはこの理想を実現させてくれるのですから、使わない手はない、ということになります。

 さらに、それとは別に

  • 書くことが困難な生徒にとって、タイピングの方が負担が少ないかもしれない

ということも実はけっこう意識していました。生徒の中にはそもそも「書く」という動作を大きな負担だと感じる人がいます。定期考査では、問題に解答するためには全員が「書く」必要があるのですが、その必要を取り去ったらよりよく解答できるようになる生徒がいるかもしれないと期待していました。

 

3.小テストの形式を決定する(問題形式)

 英語のテストでよくある形式のうち、以下の2つを使いました。

  • 記述:スペリング、記号やスペースの要不要の識別ができるかみたい問題
  • 選択:書けなくてもかまわない問題。見て選べればいい問題

 自動採点を上手に利用するために、「『日本語で答える問題』は『記述で答えさせない』」ようにしてみました。中学1年生の前期の段階では、「英語で答える問題」であれば、記述にしても正解の数を多くても3つほど絞ることができます。Google Formsで自動採点機能を利用するためには、問題作成時に模範解答を設定することが必要です。素晴らしいのは、模範解答を複数用意できることです。これがあると、生徒たちが以下のどれを書いてきても自動採点でマルにすることができます。模範解答として以下のすべてを入力しておけばよいだけなので。

  • She is not our teacher.
  • She’s not our teacher.
  • She isn’t our teacher.

www.youtube.com

www.youtube.com

 もし「日本語で答える問題」を「記述で答え」させたら。正解にしなければならない回答が限りなく想定されてしまい、自動採点できなくなると思います。また、単語や文を和訳させる問題では、生徒たちの誤答は相当似通ってきますので、それこそ、選択で答えさせれば十分だと思います。

 

4.小テストの形式を決定する(実施方法)

 「1」「2」の繰り返しとなりますが、「【練習→フィードバック→やり直し】の繰り返しを通じて『おぼえるべきことを正確におぼえる』」ことがこの小テストのねらいなので、実施方法は以下のようにしました。

  • 何を見てもよい(教科書、ノート、授業で配布されたプリント、副教材、定期考査の問題・自分の答案・模範解答など)
  • インターネットは使わない
  • 満点になるまで何度でもやり直せる
  • 成績に入れるのは一番高い点数のみ

 この小テストでは、結果として「必要な単語や文を正しくおぼえている」ことが何よりも大切なので、このような実施方法を取ることとしました。また、この授業のあとも家で再トライしてもよいことにし、また、この小テストのことを聞きつけた生徒たちが事前に家でこの小テストを受けることも特に不可とはしませんでした。(そこまでやってきた生徒は学年でたった1名でしたが。その生徒は通常授業にはほとんど参加していない生徒だったので、これは願ったり叶ったりでした。)

 

【実施・フィードバック・やり直し】

1.あとはやるだけ

 ここまでくればあとはやるだけです。全員がログインするのを待って、キーボードの使い方を練習してから、一応「せーの」で始めましたが、そこまで厳密には時間の管理をしませんでした。デバイスを利用した小テストの場合、全員のスクリーンがまったく同じものを表示している状態にするのは難しいです。万事指示通りにやってくれる生徒もいれば、操作に手間取って遅れる生徒もいれば、うっかり先に進んでしまう生徒もいますので。そのあたりは、ゆるめにしておくのがポイントかと思います。私自身も、常に教室の中を歩き回ってはキーボード操作の手伝いをしたり、トラブルシューティングをしたり、英語自体のヒントをあげたり、満点の生徒をほめたりしていましたし、生徒も必要があればしゃべって私を呼んだりしていました。こういったことを厳しく管理しようとすると、実施自体が不可能になるだろうと思います。

 

2.フィードバックは勝手についてきます

 自動採点を利用していますので、生徒が「回答を送信」するとその次の画面で「結果の得点」と「模範解答」をもう見ることができます。そして、それをふまえて、生徒たちは気が済むまでやり直しをすることができます。これをwin-winと呼ばずになんと呼ぶか。

 

 小テストというのは、ある生徒の現在の習熟度を測るためだけでなく、それを通じてその生徒が自分のできていなかったことをできるようになっていけるようにするためのものだと思います。そう考えると、ここでご紹介したような小テストも「あり」だと思っていただけるのではないでしょうか。

 

ednotes.hatenablog.com

ednotes.hatenablog.com

 

  6月から通常登校が始まり、怒涛の2か月となりました。もっと劇的に前進させられるかと思っていたICTの導入・運用は、遅々として進まず、誰かに謝りたいような、はたまた怒りたいような、そんな気持ちでおります。でも…毎日…限界を超えて…働いて…いるんですよ…。今回はこんな地味な取り組みのご報告でしたが、こういうことだけでも半年に1回くらいできたらと思っています。(ハードルは低く。)But anyway, happy teaching, my friends!!

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EdTech導入・運営のためのチェックリスト

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Photo by Daria Nepriakhina on Unsplash

 

EdTechデバイスやアプリやサービスの導入・運営を新たに始めるときは、本来であれば、綿密な準備期間が必要となります。

 

こちらの記事中では、たとえば、大学のオンライン授業であれば、準備に通常は6~9か月ほどかかると言っています。

er.educause.edu

Typical planning, preparation, and development time for a fully online university course is six to nine months before the course is delivered. 

 

この6~9か月という数字が、基本的なインフラの整備から始めなければならない状況を想定したものなのかは不明ですが、仮に基本的なインフラの整備から始めなければならない状況を想定したとき、その6~9か月間で何が行われるべきなのでしょうか? 

 

上記の記事の中でも、「9つの分野でやることがあるよ」というふうに触れられているのですが(下線部)、これは授業そのものの計画に関わる項目で、基本的なインフラ整備に関わる項目は含まれていない、と読めると思います。

One of the most comprehensive summaries of research on online learning comes from the book Learning Online: What Research Tells Us about Whether, When and How.8 The authors identify nine dimensions, each of which has numerous options, highlighting the complexity of the design and decision-making process. The nine dimensions are modality, pacing, student-instructor ratio, pedagogy, instructor role online, student role online, online communication synchrony, role of online assessments, and source of feedback (see "Online learning design options"). 

(underline added)

 

では、「基本的なインフラの整備から始めなければならない状況を想定したときの、Edtech導入・運営のためのチェックリスト」があるとしたら、それはどのようなものか? …と考えたとき、数年前にEdTechの授業でまさにドンピシャなリストをもらったことを思い出しました。

 

教授からはあくまで「チェックリストの『未完成バージョン』」としてシェアされたことを先に断っておきます。また、授業の中でも、こういったチェックリストは各学校の現状に合わせて変更されることになると強調されていました。

 

という前置きをしたうえで。以下がその「基本的なインフラの整備から始めなければならない状況を想定したときの、Edtech導入・運営のためのチェックリストの『未完成バージョン』」(長い)です。ざっくりと、「前段階」「初期段階」「中期~後期段階」という3つの段階に分けられています。(なぜ教授がこういう分類にしたのかは謎。)

 

項目の内容に重複があるように見えるところがあると思いますが、各先生方に柔軟に解釈していただいてかまわないと思います。というか、まず私自身がこのリストを英語から日本語に訳す時点で私の解釈を加えてしまっているはずなので、そちらもあわせてご承知おきください。

 

=====================================
前段階
• そのEdTechを導入・運営するの理由を明確化する
  -そのEdTechを導入・運営する目的を明確化する
  -そのEdTechの導入・運営へのニーズを調査する
  -そのEdTechの導入・運営が誰のためなのかを明確化する
• 学校、地方自治体、国といった各レベルで義務とされていること、また、制限されていることを確認する
• 現場の現状を分析をする
  -教員のスキルやEdTechに関する見方を調査する
  -すでに利用されているEdTechは何かを確認する
  -すでに実施されているEdTech利用とこれからやろうとしていることの関係性を分析する
• 利用可能な資源を探す(物的資源、人的資源、金銭的資源)
  -先行実践例を見る
  -研究論文を読む
SWOT分析を行う(強みStrengths、弱みWeaknesses、チャンスOpportunities、脅威Threats)
• そのEdTechを導入・運営した場合の関係者(関わる人・影響が及ぶ人)を挙げる

 

初期段階
• 関係者の代表から委員会をつくる
• そのEdTechの導入・運営におけるビジョンとミッションを決める
• 委員会のリードの下、そのEdTechの導入・運営のための計画を立てる
• 配慮すべき事項をまとめる(方針や方向性がぶれないように)
• 関係者がどのようにコミュニケーションを取り合うかを決める(ツール、タイミング、誰にどんな情報を何のために伝えるか)
• 技術的なサポートをどのように得るか、また、与えるか計画を立てる
• そのEdTechの導入・運営が、プロセスの段階から、関係者にとってインクルーシブなものになるよう計画を立てる

 

中期~後期段階
• 短中長期的な目標を適宜設定、調整する
• タイムラインを適宜設定、調整する
• そのEdTech導入・運営の成功・不成功の測り方を決め、また、測るツールを用意する
• 試運転をする
• 教職員の研修を計画・運営する
• ここまでの段階から得られたフィードバックを改善に活かす(くり返す)

 

※ オリジナルはDr. Peter Arthurによるものです。

peterarthur.ca=====================================

 

現在、日本の多くの先生方が「GW明け」を期日に、遠隔授業の準備を進めていらっしゃることと思います。今日から数えると、準備期間は残り1週間です。したがって、「基本的なインフラ整備から始めるという選択肢はそもそも無視して、手持ちのコマで戦う」というのが与えられた唯一の道なのだと思います。

 

そんな中、なぜ私が上記のチェックリストをシェアしたのか。それは、なんとなくしておいた方がいいような気がしたからです。

 

今までの教員生活、何においても、見切り発車をして結果オーライだった経験がないので、大事なことの多くを「走りながら」決めていくことに対して、私がビビっているのでしょうね(小者)。EdTech そのものは大好きなので、先日の文科省からの「Youたち、とにかくできることやっちゃって!」というお達しにはテンション爆上がりなのですが、今の「目隠しでとりあえず全力疾走」という状態を続けた場合にどこに行きつくかについては、あまり希望を持てずにいます。年のせいかな。このリストが私にとってのレファレンス・ポイントとなって、大きく道を踏み外すことを防いでくれるのではないかと願ったりしているのかもしれません。

 

さ、それではまた次回まで。Happy teaching, my friends!!

 

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オンライン授業を昨年まで受けていた私が最高だったオンライン授業を紹介してみる。

こんにちは。

  

さて、5/7(木)からの学校再開が実際に可能なのか見当もつかない中、「オンライン授業」についての議論が活発になってきています。遅ればせながら、私にももしかしたらシェアできることがあるかもしれないと、このエントリーを書いています。シェアする内容というのは、タイトルの通り、「オンライン授業を昨年まで受けていた私が最高だったと思うオンライン授業」です。

 

このエントリーの内容は、ICT環境が整っていない学校の先生にこそ応用して使っていただきたいです。(私の勤務校のように)ICT環境が整っていない学校では、今後数か月間は、分散登校や郵送という手段をとりながら、児童生徒の学びを継続させていくしか方法がないと思います。「ほぼオフライン」でも、対面やオンラインでのような丁寧な指導の実現する方法はないか。そう考えたとき、ここでご紹介する授業運営の仕方が使えるのではないかと思いつき、このエントリーを書くに到っています。ここから先にご紹介する「オンライン授業」で使われているノウハウは「ほぼオフラインの遠隔授業」にも十分応用できるものだと思います。

 

 

大事なことを先に言っておきます。「授業動画もライブ配信もたぶんマストじゃないですよ!」「この最高だったオンライン授業、基本Wordしか使ってませんでしたよ!」これです。このエントリーが、先生方とオンライン授業(それが不可能な場合にはほぼオフラインの遠隔授業)との間に立ち並んでいるハードルをいくつか取り除く一助になれば幸いです。

 

さて。では。

昨年まで通っていたUBCの大学院では私は対面授業とオンライン授業をちょうど半々で履修していました。どれもとてもよかったのですが、オンライン授業の中で特によかったのが、「Global Education, Citizenship, and Cross-Cultural Conceptions of Teaching and Learning(グローバルな教育、市民権、そして教育と学習に関する多文化的な考え方)」という授業でした。

 

はっきり言って、この授業の内容それ自体はこのブログのエントリーのテーマとは関係がありません。重要なのは、このオンライン授業の運営方法です。授業の内容までわかった方がイメージしやすいという方もいらっしゃるかもしれないので、一応内容もご紹介しますが、多くの方にはそこは無視していただいていいだろうと思っています。

 

そんなわけで、その授業の運営方法は以下の通りでした。

 

授業頻度:週1回

※ 厳密には「週に1回課題の締切があり、それをクリアしたら次の締切分の課題に進む」という形。ある1週間はある1つのテーマに取り組むことになるので、なんとなく「週1回授業を受けている」感じになります。大学院の典型的な授業の進み方かと思います。「週に1回授業があって、そこでの内容をふまえて出された課題に(翌週の)次の授業まで取り組む」という。

プラットフォームCanvas

※ 日本でCanvasを使っている学校があるというのは聞いたことがありません。Google ClassroomでもEdomodoでもClassiでも、先生方が利用できる(できそうな)プラットフォームで当てはめてお考えいただえれば大丈夫です。

教授が授業準備に使っていたツール:Word、上記のプラットフォーム

生徒に必要だったもの:ネット接続、デバイスタブレットでもノート型パソコンでも)、プラットフォームに接続するための学校からもらうアカウント

内容:Global citizenship(グローバル化した世界における市民権)にまつわる様々なテーマを、1週間ごとに1つ学ぶ。(グローバル化した世界における教育、市民権についての多様な見解と倫理、帝国主義と人種差別、多文化社会とコミュニケーション、資本主義と新自由主義と消費社会、メディアと若者のアイデンティティ、地域活動とNGO、などなどがテーマでした。)

※ こちらは、先生方の担当教科・学年に合わせて自由に単元を当てはめてお考えください。

進め方

1.1週間ごとに1つのWord文書が与えられる。そこに教授が学習活動の指示をまとめてくれているので、学生は時間のある時にそのとおりに進める。

※ 指示は、「この動画を見なさい」とか「この記事を読みなさい」とか「このウェブサイトのこのデータを分析しなさい」とかいったことから始まり、「この中の○○という考え方は△△だと思いますか?なぜそう思いますか?もしくは、なぜそうは思いませんか?」のような質問や、「以上の活動を通してあなたが考えたことを約□□□字でまとめなさい」という課題の提示につながる。

簡単に言うと、ゲームブックをやる(読む)感じと似ています。

2.各Word文書の最後には、上記のような、自分の考えをまとめるための作文の課題があり、その作文を期日までにCanvas上のブログにアップする。

3.他の学生も同じようにするので、彼らの作文の中で自分が気になったもの2つ以上に期日までにコメントをする。

4.↑ここまでで、1モジュール終了。あとは、教授やクラスメートがくれたコメントを読んだり、もし自分がそうしたければ、それらのコメントに返事を書いたりする。

 

通常の授業はここまでです。

あとは、学期末のプロジェクトですが、それは以下のように行われました。

 

1.学期末にはグループでのプロジェクトがあり、Global citizenshipにまつわるテーマを自分たちで選び、授業プランを1つのWord文書にまとめる。(教授が私たちのために用意してくれた通常授業での指示のフォーマットを参考にする。)

2.グループ・プロジェクトの際には、学生間のコミュニケーションはCanvasを使っても使わなくてもよい。(私たちは終始Google Docsを利用しました。)教授に質問があるときには、Eメールを送る。

3.プロジェクトが完成したらCanvasにブログの1エントリーとしてアップする。Google Docsのリンク先をブログにそのまま貼り付けてもよい。他の学生はプロジェクトを通じて計画された学習活動を児童・生徒の気持ちになって実際にやってみて、その感想などをコメントとして書く。

 

イメージしていただけたでしょうか…(自信ないぜ…

 

シラバスと実際のWord文書をドンとここでご紹介できたらこの伝わらなさは一発で解消されるのですが、著作権を考慮して、それは控えておきたいと思います。代わりになるかわからないのですが、中1英語で仮にこの形式でやるとこんなふうになるよ!という例を作ってみましたので、お目汚しまでに…ご覧…くだ…さい…(気づいています…この例のせいで余計いろいろわけがわからなくなることは…そして…まずこの例が小さすぎて見えないということも…

 

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もしプラットフォームとしてGoogle Classroomを使うのであれば、Google Formsとセットにしておいて、そこで生徒に質問に答えてもらうといったことができますね。

 

冒頭でも書いているように、今後「ほぼオフラインの遠隔授業」を行わなければならなくなる先生方は、1週間分の授業内容を1つのWord文書にまとめて、配布するなり学校のウェブサイトにアップするなりできるのではないかと思います。(生徒の理解度・習熟度を測るための活動に関しては、私もまだ調査中&考え中です。)

 

とにかく(切り替え!)、このUBCで受けていたオンライン授業が本当によかったのです。私のクラスメートも絶賛していました。よかった理由を思いつく限りで挙げてみると、以下のようになります。

  • インプットの量が十分にあった。(動画や記事や論文やウェブサイト)
  • インプットの後に具体的な質問項目があったため、インプットについて考えを深めやすかった。(「~について考えなさい」といった抽象的な指示は一切ありませんでした。)
  • インプットについて考えた後にはアウトプット(書く作業)を行わせる課題が続いていたので、与えられたトピックについての自分の考え方や立場を整理し、客観視することができた。
  • 他の学生の作文を読んでコメントを書くという課題があるので、学生の数だけある多様な考え方や立場について知ることができ、また、それに自分の考え方や立場が影響される様子を言葉にして整理することができた。
  • 教授のレスポンスが迅速かつ丁寧だった。質問に対してもブログに対しても、とにかく数時間で必ず返信やフィードバックがあり、しかも適切で良質だった。

 

この授業を受けた時点で、私はすでに3つほどオンラインの授業を終えていました。中には、パワーポイントで作成された動画を使っている授業や、ご自身が話している様子を撮影して使っている授業や、ライブ・ビデオチャットを使った授業もありました。どれもよかったのですが、「自分の頭を使ってとことん考えて、その経験が自分の中に今も生きている」と一番思えるのは、やはりこのGlobal citizenshipの授業でした。

 

内容自体が面白かったというのもあると思うのですが、その面白い内容を選別してきてくれたのはそもそもその教授ですし、その材料の良さが最大限に引き出されるように授業を計画・運営してくれたのもその教授ですので、やはり、彼女の指導力が素晴らしかったのだと私は思っています。

 

この授業を受けてみて、「学習者の学びの充実度は、指導者がいろいろなアプリやデバイスを駆使して授業を行っているかどうかとは必ずしも関係がない」ということを私は感じました。

 

と書いているうちに、UBCにいたときのことを少しずつ思い出して、これに関連して書けることが他にもありそうな気がしてきています。そんなわけで、次回も「教育×テクノロジー」関連のことを何か書くかもしれません。

 

それでは、こんな時ではありますが、こんな時だからこそ、Happy teaching, my friends!!

 

===駄話===

2020年4月19日、日曜日、素晴らしい快晴の一日でしたね。昨年の今頃はまだ寒いカナダにいたので、帰国後に日本の春をエンジョイするのを楽しみにしていたのですが、どうしてどうして、この世は儘ならないものです。

 

とは言え、今年度から担任&担当する中学1年生と共通の話題を持つために、Amazon primeで『鬼滅の刃』を見たりして、なんとか有意義に過ごそうと努めています。

 

ちなみに、平日は在宅勤務です。学校からVMware HorizonがインストールされたChromebookを貸与されており、これを使って自宅から学校のサーバーに接続することができます。4/10(金)から在宅勤務がスタートだったのですが、Chromebookの操作に慣れたり学校のサーバーのどこに何があるかを確認したりする時間をしっかり取ることができ、ありがたかったです。Horizonの動作が遅くてウィンドウの切り替えだけで毎回5秒くらいかかって(本当です)仕事の効率が半減(誇張です)していることを除けば、通常の仕事もまあまあ快適にできています。

 

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「宿題が出せない生徒」とスケジュール管理

こんにちは。

 

今日は唐突に始めたいと思います。

 

同じ時間に同じ教室にいても、生徒が見ているものと教員が見ているものとはだいぶ違います。同じ時間に同じ教室にいたとは到底思えないほど、かけ離れることもありえます。

 

生徒と教員の間にあるこの「見えているものの違い」は、おそらく、「これから行うことをどれだけ正確に把握できているかの違い」と言い換えられると思います。

 

教員は、①その日に授業で扱う事項が何なのか、②その事項をどんなふうに扱うのか、③それを通じて何ができるようになればいいのか、そして、④なぜそのタイミングでそれができるようになることが必要なのか、というすべてをわかっています。

 

(バックワード・デザインで行くと、③&④→①→②の順で決まっていくと思います。)

  

たとえば、中3英語でいうと、教員は授業の前には、

①「今日は分詞の導入を行おう」、②「分詞が形容詞として働くことがわかるように、形容詞の位置に分詞を入れて英文が成立することを経験させよう」、③「今日のところは、『分詞=形容詞』という部分がわかればOK。不規則動詞の過去分詞形ができていなくても、今日は気にしない。もちろん、後置修飾は後回し」、④「この時点まで生徒たちは『V-ingは進行形』で『V-edは受動態』で、どちらも『動詞の一部』だと思ってやってきた。ここで『V-ingとV-edが形容詞的に働く』ということがわかることで、より説明的な表現をしたり理解したりできるようになる」

といったことすべてを把握しています。自分が授業をする側なので。

 

一方で、生徒たちは、教員がかなり丁寧に伝えない限りは、上記のようなあれこれはわかりません。

 

上記のようなあれこれをまるで把握できていないとき、英語では

“I don’t know what I’m doing.”(「自分が何をしているのか自分でもわからない。」)

と言ったりします。

 

私が経験した範囲では、生徒たちが “I don’t know what I’m doing.” 状態になっているとき、彼らの学びの質は低くなりがちです。

 

この傾向は、特に、いわゆる「できる生徒」では「ない」生徒たちの間で顕著になります。「できる生徒」たちは、何をどんなふうにどのタイミングで教えようが、ついてきてくれます。が、そうで「ない」生徒たちは、「何をどんなふうにどのタイミングで」に(彼らにとっての)脈絡がないと、十中八九、路頭に迷っていきます。

 

ただ、「路頭に迷って」いるかどうかは、パッと見ではわからないことがあります。「目の前に示されたものをとりあえずこなしていく」ことならできる、という生徒は多少なりともいて、彼らは一見すると「路頭に迷って」いるようには見えません。

 

ですが、実際には、彼らも「路頭に迷って」います。なぜなら、彼らには常に「目の前しか見えていない」からです。たとえて言うなら、地図を持っているのが教員だけなので、教員がいなくなったらその瞬間に「自分がどこにいるのか」「自分の目的地がどこにあるのか」「自分はどうやってその目的地へ行けばいいのか」というすべてがわからなくなってしまう、ということです。

 

「できる生徒」というのは、多かれ少なかれ、自分でもある程度「地図」を描くことができています。なので、教員がいなくなってもその地図を頼りに学習を進めていくことができます。

 

さて、ここからが本題です。(遅

 

「いわゆる『できる生徒』では『ない』生徒」と「宿題」。これがテーマです。

 

「いわゆる『できる生徒』では『ない』生徒」が「宿題を出せない生徒」であることは珍しくありません。

 

ここからは、彼らがなぜ「宿題を出せない」のか、また、教員はどうやって彼らをサポートできるのかを、ここまで述べた「これから行うことの把握」というポイントから考えてみたいと思います。

 

「宿題を出せない生徒」のことを、教員はよく「家庭学習の習慣がついていない生徒」と呼んだりすると思います。ただ、一口に「家庭学習の習慣がついていない生徒」と呼んでも、彼らが家庭学習をしないことの裏にはそれぞれけっこう異なった理由があるものです。

 

それらの理由をまとめると

  1. 授業がわからないので、宿題の内容もわからない
  2. 宿題の内容が授業の内容と関係ないのでわからない、もしくは、大変そうに見えてやりたくない
  3. 授業がわかっていて、宿題の内容も適切だが、宿題の量が多すぎて手が回らない
  4. スケジュール管理ができない

 

他にも、家庭の事情や体調不良で家庭学習ができない生徒はもちろんいますし、また、中1や高1で新しい環境にまだ慣れていない段階では、登下校や部活動で気力も体力も使い果たしていて、家庭学習が思うようにできない生徒がよくいます。あとは、「マジで学校の勉強も成績もどうでもいい」というアナーキストもいます。

 

上記のいろいろある理由の中でも「教員の努力と配慮で改善できる」ものとして1~4を挙げてみました。

 

この1~4の中で、このエントリーでは4だけに焦点を当てたいと思います。

 

というのも、4だけが特徴的だからです。4だけが、生徒の「学習能力にも学習意欲にも関係がない」んですよね。

 

つまり、4の理由で宿題が出せない生徒というのは、教員がちょっと配慮するだけで、途端に家庭学習ができるようになり宿題が出せるようになります。

 

「教員がちょっと配慮する」というのは、要は、「教員がスケジュール管理をやってあげる」ということです。

 

「スケジュール管理くらい自分でできるようになっていないと卒業後に困る」という見方もあると思うのですが、スケジュール管理というのは「そこそこの全体像が見えている」人にこそ可能な芸当であって、目の前しか見えていない人にはできません。

 

また、「明日提出になる宿題の指示を今日出しているだけなのだから、スケジュールも何もあるか。やって出せばいいだけだ」という見方もあると思います。教員の立場からするそう言いたくなりそうなところですが、生徒の立場からするとこれは難易度が高いのです。なぜなら、彼らは10教科、科目数にするとそれ以上の授業を受けていて、毎日それぞれの授業で何かしらの宿題が出たり出なかったりするからです。今日突然言われたことを彼らが頭の中に留めておくことができなくても、あまり責められないような気がします。

 

大人だって、スケジュール管理には苦戦するものではないでしょうか。たとえば、自分の部署のリーダーがこれから始まるプロジェクトのスケジュールを整えてあらかじめ配ってくれると、それがない場合よりは、落ち着いて自分のペースで仕事に取り組めるということがありませんか?「田中さん、明日の10時までにコレよろしく!」みたいな指示が毎日来るのとは、だいぶ違うと思いませんか?

 

そんなわけで、私はこんな雰囲気の宿題スケジュール表を作って、1人に2枚ずつ配っています。1枚は持ち歩き用、1枚は家の掲示用です。実際には、1度で3週間分ほどのスケジュールを知らせています。

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ご覧の通り、やることが5種類あります。1つひとつの量が多くなかったとしても、何をやるのかを生徒が正しく記憶しておくのが難しいかもしれません。これを配っておくと、生徒たちはいつ何をやるかを「記憶」しておく必要がなくなります。

 

さらに、うまくすると、「授業の進度と宿題の出方の関連性」に気づくことができます。前半の例で言うと、この宿題スケジュール表が生徒にとって、不完全ながら、「地図」になるということです。

 

たかがスケジュール管理、されどスケジュール管理。スケジュール管理ができるようになるだけで、頭のてっぺんまで “I don’t know what I’m doing.” 状態に浸かっていた生徒も、水面に顔を出して呼吸をすることができるようになります。(陸に上がって走りだせるようになるのはまだ先ですが。)

 

この宿題スケジュール表の効果は、宿題を出せない生徒の10人に1人くらいには即表れます。残りの9人には即効性はあるときもあればないときもあるのですが、デメリットはないはずなので、1人に確かな効果があるのであれば、やってみる価値は十分にあると思います。

 

また、宿題スケジュール表を作成することのメリットは教員の側にもあります。一言で言うと、「より高い学習効果があるように宿題を出せるようになる」ということです。「生徒ができそうな内容と量の宿題を授業に一番活きてくるタイミングで出す」ことができるようになるというわけです。

 

生徒たちが複数の種類の授業を受けているように、先生たちも複数の種類の授業を担当していることが多く、また、その他の業務や校務などで毎日の授業がどうしても自転車操業になってしまうことがあると思います。そうすると、宿題の指示を出し忘れてしまったり、学校行事を考慮し忘れて、宿題をおかしなタイミングでやらせなければいけなくなったり、といったことが起きてしてしまいます。

 

そうなると、今度は上記に述べた

2. 宿題の内容が授業の内容と関係ないのでわからない、もしくは、大変そうに見えてやりたくない

3. 授業がわかっていて、宿題の内容も適切だが、宿題の量が多すぎて手が回らない

という理由で、生徒は宿題を出せなくなってしまいます。

 

こういう事態を避けるための一番の対策が宿題スケジュール表の作成だろうと私は思っています。

 

先にも述べたとおり、スケジュール管理というのは「学習能力にも学習意欲にも関係がない」ため、教員からすると「それくらいは自分でやってね」と生徒に言いたくなる領域のことかもしれません。ですが、「宿題を出せない生徒」の一部は、その領域のことでもサポートを必要としています。

 

これを読んでくださっている先生方には釈迦に説法なのだろうと思いながら、今日はこの辺りで。それではまた次回まで。Happy teaching, my friends!!

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