今年の4月から新しい自治体で働いています。
新しい自治体には「新しい常識」があって、何をしていても新しいやり方に出会うものです。授業のやり方、学級運営のやり方、学校行事や生徒会活動のやり方から、部活動の位置づけ、教員間での意思決定の流れ、教員の働き方まで、多かれ少なかれほとんど全部が新しい。
その中で最近「これは新しい!」と思ったのが、成績のつけ方でした。
話を先に進める前に、まずいわゆる「成績」というのが何を指すかをはっきりさせておきます。通知表に載る「成績」には2種類あります。一つは「A・B・Cでつく観点別評価」、もう一つは「5・4・3・2・1でつく評定」です。生徒たちが「成績が上がった」とか「成績が下がった」というときの「成績」は「5・4・3・2・1でつく評定」の方を指します。
ちなみに、観点というのは
学校教育法第30条第2項が定める学校教育において重視すべき三要素(「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「主体的に学習に取り組む態度」)
のことです。この「三要素」を「3観点」と呼びます。国語であれば、該当の生徒が国語の学習活動でこの「3観点」(①「知識・技能」、②「思考力・判断力・表現力等」、③「主体的に学習に取り組む態度」)をどれくらい伸ばせたかをA・B・Cの3段階で評価します。
さて。
前任の中学校(X校)と現任の中学校(Z校)はどちらも5・4・3・2・1の5段階で評定を決めるのですが、この決め方が違っています。どう違うかというと、「A・B・Cの観点別評価」と「5・4・3・2・1の評定」の関わり方が違います。
X校:
観点別評価
3観点それぞれ、到達度が
80%以上→A
80%未満~50%→B
50%未満→C
評定
3観点すべての到達度の平均が
90%以上→5
80%以上→4
80%未満~50%→3
50%未満~20%→2
20%未満→1
私にとってはこれは「強みで弱みをカバーできるタイプ」の評定の決め方です。結局大事なのは「3観点すべての到達度の平均」なので、3観点のいずれかに弱いものがあっても、他の2つが強ければそれで補えてしまいます。
可能性としては「観点別評価CBC:評定3」(①45% ②65% ③45%=平均51.7%)などといった場合がありえることになります。
他にも、この評定のつけ方だと、「観点別評価AAA:評定4」(①80% ②80% ③80%=平均80%)の生徒もいれば、「観点別評価AAA:評定5」(①90% ②90% ③90%=平均90%)の生徒もいる、ということになります。
そのため、生徒や保護者からすると、「Aなのはわかったけど、到達度はどうだったの?」という疑問が解消されないと、観点別評価のアルファベットが意味のある文字になりません。実際、X校に勤務していたときには面談などの機会に、「今の到達度はこれくらいです」ということを伝えていました。
では、Z校はどうでしょうか。
Z校:
観点別評価
3観点それぞれ、到達度が
90%前後以上→A
A未満~50%前後→B
B未満→C
評定
観点別評価が
Aが3つ(AAA)→5
Aが2つ(AAB、ABA、BAA)→4
Bが2つか3つ(ABB、BAB、BBA、BBB、BBC、BCB、CBB)→3
Cが2つ(BCC、CBC、CCB)→2
Cが3つ(CCC)→1
これは、観点別評価(A・B・C)がついた時点で、自動的に評定が決まるというやり方です。X校のように、観点②の強みで観点①③の弱みを補うなどといったことはできないので、「3観点すべてを伸ばしたいタイプ」の評定の決め方、と呼べるでしょうか。
それぞれにそれぞれの妥当性があるように見えるでしょうか? 実際、あるのだと思います。
ただ私の場合で言うと、評定を決めていて「あれ、この子4だと思ったのに3?」といったような「ん?」という評定が出てくる確率がやや高いのはZ校のつけ方です。2つの観点で到達度が約90%以上でないとAがつかず、それは高いハードルなので、仕方ないことなのですが。もちろん、観点によっては到達度を調整して「85%以上がA」などとすることもできます。ですが、Z校の評定のつけ方だと、「Aが増える=5と4が増える」ということなので、到達度を下方修正すると「このあたりの子たちはちょっと5や4ではないぞ…」という集団が一気に5や4になってしまって、成績の妥当性が下がります。そんなわけで、「生徒の習熟度」「生徒自身の認識」「通知表に載る成績(観点別・評定ともに)」がどこからみても妥当なように評価するのに、今は少し苦労しています。
そもそも、Z校の自治体の教育委員長は「到達度」という考え方自体を認めていない(AはあくまでAで、そこに90%も100%もない)ということもあり、文化の違いというか、もうとりあえず「新しい!」と思いながら来るものすべてを飲み込んでいるところです。
他の先生方の成績のつけ方や、それに関する思いなどもぜひうかがってみたいです。それでは、今日はこのあたりで。Happy teaching, my friends!!