先生のためのアイディア帳

効果的な指導法やエトセトラについて

具体的な評価基準を設定して学びの質を上げる

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Photo by Jannes Glas on Unsplash

こんにちは。

 

前々回および前回に続けて、評価の話題です。ここまで、評価というのは生徒に「君は2ね」とレッテルを張ることを必ずしも意味せず、生徒のこれから先の学びを形成していく役割も果たせるのだということをお話しました。

 

この後者のタイプの評価がformative assessment(形成的評価)で、これは生徒の学びのプロセスを評価する評価です。別の言い方をすると、生徒の学習活動をプロセスとしてとらえて評価する評価です。わかりにくいですね。事例を挙げて説明してみます。

 

事例:中1英語で生徒が正しい発音ができない

 

生徒の学習活動をプロセスとしてとらえる場合の評価:

①生徒の学習活動を観察する。モデルとなる音声をどう聞き取っているか、口の開け方はどうか、人前で英語を発音することへの抵抗感はないか、など。②自分(先生)の指導を振り返る。生徒が理解できるよう具体的な説明をしたか、練習する機会を与えたか、生徒が間違っていた時に生徒が理解できるよう具体的なアドバイスをしたか、生徒の発音への抵抗感を下げるための工夫をしたか、など。

 

生徒の学習活動を結果としてとらえる場合の評価:

「この生徒は正しい発音ができない」ピリオド。

 

言うまでもなく、生徒の学びの質を上げたければ生徒の学習活動をプロセスとしてとらえてformative assessmentを行うことが不可欠なのだとわかります。

 

で、前置きが長くなりましたが、ここからがこのエントリーの本題です。

 

「formative assessmentをしていても生徒の学習活動が改善されない」のはなぜか、上の事例でいうと「formative assessmentをしていても生徒の発音がよくならない」のはなぜか。これです。言い換えると、「成功していないformative assessment」の特徴についてです。

 

さっそく言ってしまいます。「評価基準がぐだぐだである」、これに尽きます。

 

評価基準。何でしょうね。評価基準とは何かのだいたいのイメージを描くために、まずは、評価基準がぐだぐだではない場合を考えてみます。上の事例で行きましょう。「正しい発音」の評価基準であれば、たとえば最初に「他の単語と混同されることなく、聞き手に伝わる発音」という大枠を設定します。で次に、これを分解して「『母音の発音』『子音の発音』『つながる部分や消える部分の発音』『音の長短』『音の高低』がそれぞれ聞き手が理解できる程度に正しく発音されている」というより具体的な評価基準を設けます。こうすると自動的に、「正しくない発音」というのは「そんな英語はないよ」という状態か「それだと他の意味に聞こえるよ」という状態のいずれかであるということも定義されます。

 

生徒の学習活動を観察する際および先生自身の指導方法を振り返る際には、この大枠の評価基準と具体的な評価基準を念頭に置きます。すると、生徒サイドと自分サイドで何がよくて何が不足しているかをかなり的確に評価することができます。この評価がこれから先の指導につながります。

 

ではこれに対して、ぐだぐだな評価基準というのはどんなものでしょうか。一言でいうと「具体性がない」評価基準です。たとえば「ネイティブっぽく聞こえる」とか。これだと、教員が「ネイティブっぽく聞こえない」と思った発音は正しくないと評価され、そのあとの指導はたぶん「もっとネイティブっぽく発音してみようか」みたいなことになるかと思います。

 

formative assessmentをしようとすると、先生の仕事はさらに忙しくなります。生徒の学習活動の結果ではなくてプロセスに対する評価というのは、一回限りではなくて常に継続的に行われなければならないので。ですが、これ、ほとんどの先生がほとんど無意識で日々されていることだと思います。「この生徒は記述問題も良く取り組んでいるけれど、回答が的を射ていないことが多いな」とか「この生徒は練習をよくしているのにタイムが縮まらないな」のように、生徒の学習活動について「うーむ」とか「あれ?」とか思う時、先生は何らかの評価基準に基づいて生徒の学習活動を評価しているわけです。その評価基準が具体的であればあるほど、評価も具体的になって、フィードバックも具体的になって、生徒の学習活動の迅速な改善へとつながっていきます。評価基準を具体的に決めるためには少し時間がかかりますが、一度ここを固めてしまえばあとの指導が、少なくてもそうでない場合よりは、スムーズになります。

 

具体的な評価基準の重要性を力説してみましたが、どうでしょう? これを読んでくださっている先生、この後にする授業の学習目標は何ですか? その目標に生徒が到達したかしていないか、どう評価しますか? その評価の評価基準は何ですか? この質問に一つずつ答えていくと、授業中に何に注意しようかがよりはっきりしてきませんか?

 

書き落としていることがたくさんある気がするので、次回は何かフォローアップ的なことを書くかもしれません。それではまたその時まで。

 

Happy teaching, my friends!

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