先生のためのアイディア帳

効果的な指導法やエトセトラについて

生徒の学びを促進する評価:formative assessment

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Photo by Tuân Nguyễn Minh on Unsplash

こんにちは。前回のエントリーの続きです。

 

本題に入る前に。今formative assessmentをGoogle検索してみたところ、summative assessmentと併せてふつうに和訳が出てきますね。

 

formative assessment = 形成的評価

summative assessment = 総括的評価

(参照:https://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/archives/beat/beating/035.html

 

振り返ってみると、学校で勤めている間にこの用語を聞いたことはない気がします。大学で教職課程を履修していた時にはもしかしたら耳にしていたかもしれませんが、記憶にはありません。この用語と概念は日本ではどれくらい知られているんでしょうね。カナダの先生たち(幼稚園~大学)の間では、当たり前に共有されているように見えます。とは言え、私が普段会っているのは学校で教えつつ大学院に通ってきているような先生たちなので一般化できないかもしれませんが。

 

ではここから本題です。「formative assessment大事!」という話です。

 

前回書いた通り、formative assessmentというのは「途中の評価」です。先生は生徒の学びの途中段階(プロセス)を評価して、生徒たちが必要としているサポートが何かを判断します。そしてこれはformative feedback(その評価とサポートを生徒に与えること)につながります。

 

formative assessmentは、summative assessmentとして最終的な評価を受ける前に、何回も生じるので、生徒はそのフィードバックを先生から受ける度に、自分のやっていること(テスト、作文、課題、実技系のパフォーマンスや作品など、というか、ありとあらゆる学習活動)を修正したり改善したりできるわけです。そして、先生は生徒が改善してきたものをまたformative assessmentし、フィードバックを与え、生徒が学習目標に到達するまでこれを続けます。

 

対して、summative assessmentは最後通告的評価なので、それを受けた後には修正も改善も何もありませんね。中3の3学期に成績表をもらって「そうか、私(5段階で)2か…」と思って家に帰って夕飯を食べて寝て次の日には忘れて、ふとした時に思い出すけれどだからどうするわけでもないというあの感じです。

 

ここまででもうなぜ「formative assessment大事!」なのかピンと来ている方も多いかと思います。が、念のため事例を挙げて、それぞれの評価方法がどういう指導につながるかを簡単に説明してみます。

 

事例:中1数学でクラスの半分が文章題でつまづく

 

formative assessment(とフィードバック)がある場合:

つまづいている生徒に対して、先生はサポートを与える。生徒はそのサポートを頼りにつまづきを解決する。

 

summative assessmentのみの場合:

つまづいている生徒に対して、先生は特にサポートを与えない。生徒は自分から先生や友人やその他の人にサポートを求めてつまづきを解決するか、サポートを得(られ)ず未解決のまま終わる。

  

で、このつまづきに対する対処がうまくいったか否かが、定期テストや学期末の成績などといったsummative assessmentに反映されます。

 

実際の教科指導はこんなに極端ではないので、summative assessmentしかない指導というのは考えられませんが、私が経験してきた感じだとformative assessmentにあまり力を入れていない指導というのはけっこうある気がします。つまづいている生徒がいるのを知りつつも、つまづきについて対策を取らず、学期末に×が並んだ答案を見ながら「あの子、もうちょっと頑張ってくれるといいんだけどねえ」みたいな。

 

脱線しますが、これをご覧になりながら、「formative assessmentに力を入れていても学期末に×が並んだ答案を目にします」と思われた先生はいらっしゃいませんか? 正直なところ、私です。「以前の私です」と過去形にしたい気持ちを抑えて告白します。私です。これについては次のエントリーに書きます。

 

元に戻しまして。そんなわけで、formative assessmentというのは「途中の評価」であり、「君が今立っているのはここだよ」と生徒の現状を生徒本人と一緒に把握するための評価です。そして、この評価は「じゃあ、あのゴールに到達するには君(生徒)と私(先生)は何をすればいいかな」と先へつながっていきます。和訳が「形成的評価」となっているとおり、この評価を通じて生徒の学びが形成されていきます。

 

先生が生徒に与える評価というと、生徒にペタッとレッテルを張って「はい、君は2。じゃあね」みたいなことを想像しがちですが(私だけ?)、formative assessmentという評価もまた評価なわけです。

 

formative assessmentについて前回より詳しく書いてみましたが、どうでしょう? これもまた評価だと意識すると、今日この後に生徒たちと接する接し方がちょっと変わる気がしませんか?(テンプレ)

 

次回は、formative assessmentをしていても生徒の学習活動が改善されない場合について書こうと思います。それではまたその時まで。

 

Happy teaching, my friends!

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