先生のためのアイディア帳

効果的な指導法やエトセトラについて

オースティンの蝶々:「生徒の学びを促進する評価」のすばらしい例

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Photo by Alan Emery on Unsplash

こんにちは。

 

今日は理想的な評価基準と、そこからつながる理想的な評価活動についてです。ここまで「formative assessment大事」「具体的な評価基準大事」ということを4回のエントリーに渡ってしつこくお話してきました。今回はその「大事さ」がこれでもかというほどうまく表されている学習活動の動画をご紹介します。

 

先に言っておくと、この動画で一番の焦点になっている評価は「生徒・児童➡生徒・児童」という評価で、「先生➡生徒・児童」という評価ではありません。が、これはもちろん「先生➡生徒・児童」という評価にもそのまま応用できます。(先生を「教員研修の講師」、児童を「研修に参加している先生」と見立てみて下さい。)何より、この動画は評価の必要性の根本をドンと突いているので、とにかく見ていただければと思います。

 

ちなみに、カナダ私が会った先生はこの活動をそのまま「Austin's butterfly」と呼んでいるようですが、今Google検索した感じだと、日本語にはまだ訳されていないようですね。タイトルのとおり「オースティンの蝶々」がいいかなと思うのですが、いかがでしょう?(謎の質問)

 

日本語字幕がないのが残念ですが、何が起こっているか流れは十分につかめるかと思います。

 

critique and feedback - the story of austin's butterfly - Ron Berger

www.youtube.com

……。言葉を失いますね、感動して。これ義務教育の教材にしたらいいと思いませんか? 私は全力で推します。

 

さて、動画の中の事柄はこんなふうに理解できます。

  • 蝶々の写真:評価基準
  • 先生の問いかけ:プロンプト(児童が評価について考え始めるきっかけ)
  • 児童の無言の状態:評価基準に基づいたformative assessment
  • 児童の発言:評価基準に基づいたformative assessmentのフィードバック

さらに言うと、先生の問いかけは、児童の発言に対するformative feedbackにもなっているのですが、そこまで言うと無駄に複雑になる気もするので省略します。

 

先生のプロンプトの1つ目の重要な個所は2:00のところですね。こう言っています。

And they decided to split their advice into two kinds. First, just the shape of the wings. And then when the shape was right, they'd give him advice about the pattern inside the wings .

(細かい聞き取り間違っていたらご指摘ください!)

 

「形」に関する評価と「柄」に関する評価は分けましょう。「形」に関する評価を先にして、その後「柄」に関する評価に移りましょう。と、評価の際に注目すべき要素を整理しています。蝶々の写真という目に見える評価基準があると、それで十分なように思いがちです。でも、それに照らし合わせながら別の作品を評価する(この場合、そこに近づけていく)って、実は簡単ではありません。(絵がド下手な人間としてこれは心底思います。)注目すべき複数の要素がごちゃまぜになっているままだと、どこはOKでどこは要訂正なのかを見落としたり誤って認識したりすることにつながります。

 

先生のプロンプトの2つ目の重要な個所は2:27のところです。こう言っています。

Show me! Come up here.

Longer where? Draw where you would draw it.

ここでは、児童がより具体的に評価できるよう、言葉だけでなく実際に動作で「ここがこう」と示す機会を与えています。さらに「どこを長くするの?」とも問いかけ、そして彼が説明を終えたら、

That's very specific.

これで、「具体的であること」が「いいこと」なのだと念を押しています。最後の振り返りでも先生が誘導しつつ児童から「具体的」というキーワードを引き出しています。

 

次は、4:30辺りからのところです。児童たちの評価とフィードバックがどうオースティンの絵の改善につながっているか、「ほら、ここ」「ほらここも」と、確認しています。これは、評価者である児童に対するポジティブな評価で、児童に「いい評価とは何か」「いい評価者とは何か」というメッセージを伝えています。Geez, this is so powerful...

 

最後は、5:13辺りからです。こう言っています。

Let me show you where he started, just to give you a quick reminder.

振り返りですね。デューイ(John Dewey)を引用するとまさに「経験から学ぶのではなく、経験について振り返って考えることから学ぶ(“We do not learn from experience... we learn from reflecting on experience.”)」という、これの実践です。

 

それから、これは直接的には誰の発言にも出ていないのですが、評価が「具体的」であるということは、その評価を受けた相手が「それを何らかの行動に移せる」ということを意味するのだというのは、ぜひ強調しておきたい点です。(英語だとmanegeableとかdoableとかいう形容詞で表される状態です。)この動画の場合、友達から受けた評価が具体的だったので、それを受けたオースティンは「じゃあここはこうか」「で、ここはこうか」とどんどん絵を改善できたのです。

 

この動画、どこかで使いたいと思いませんか? 評価についての理解を深めるために、先生に対しても生徒に対しても使えますよね。私が今パッと思いつく使い方は以下の2つです。

  1. この動画を授業や研修の中で見せる
  2. この動画を元に、自分の指導内容を当てはめて別の例を考え、それを授業や研修で使う

で、そこからロールプレイやディスカッションやルーブリックの作成などに発展させればいいのかなと。

 

次回はまた何か続きになることを書きたいと思います。それではまたその時まで。

 

Happy teaching, my friends!

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