先生のためのアイディア帳

効果的な指導法やエトセトラについて

できる生徒=自己評価ができる生徒

こんにちは。前回の終わりに一言添えたとおり、今回は「生徒による自己評価」について書いてみます。

 

主な参考文献はこちら。Nilson (2013) のCreating Self-regulated Learners: Strategies to Strengthen Students Self-awareness and Learning Skillsです。

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日本語だと『自律して学ぶ学習者を育てる:生徒の自覚と学習スキルを高める方法」という感じでしょうか。(大学の先生向けに書かれてはいますが、幼保から高校、専門学校、塾、教育の現場であればどこでも使える「へえ~!」なアイディアが125ページ程度の中にぎっしりつまっている良書です。)

 

「生徒がself-regulated learnersになるための手助けをする」ことは、私がこれまで学んだ限りでは、まず間違いなく「教育(教員)の究極的な目標」の1つです。「21世紀型スキル」などの用語が出てくるずっとずっと前から、教育は「子供たちが予測不可能な未来の社会で生きていけるようにする」ことをその大義にしてきました。これが、「コンテンツ」よりも「学び方」を教えることの方が、つまり「今100点が取れる学習者」よりも「自律して生涯学び続けられる学習者」を育てることの方が大事、というような考え方につながるわけです。

 

ちなみに、self-regulated learnersの次の段階としてself-directed learnersがセットになって紹介されている論文もいくつか読んだのですが、self-directed learnersというのは「自ら方向を決めて学ぶ学習者」というような感じです。これは、課題の発見から解決策の発案・実行と評価・見直しという、始まりから終わりまですべて自分で自分を導いていく学習者のことです。self-regulated learnersの場合は、課題や評価方法などといった枠組み自体は教員やコーチなどの指導者によって決められており、そこがself-directed learnersとの違いだろういうのが今のところの私の理解です。

 

前置きが大変長くなりましたが、では、このself-regulated learnersがどう「生徒による自己評価」に関係するのでしょうか。こちらの引用をご覧ください。 

[S]tudents who assess their work accurately – that is, the same way their instructor does – tend to be higher-achieving and more advanced. (p.11)

正確に自己評価をする生徒は、つまり指導者がするように正確に自分自身を評価する生徒は、より良い結果を出し上達する傾向にある。(訳:私)

自分のことを振り返りながら読むと「そうそうそうそう」と頷きが止まらないこの1文。特に、自分が「良い結果を出せず上達もしなかった」学びの経験を振り返ると、いかに自分が自己評価をできていなかったか、それ以前に、効果的に自己評価をする機会すら与えられなかったかが思われて、正直恨めしい気持ちになります…(今でも「ものすごく数学ができるようになりたい」という夢を捨てきれない私です。)

 

そう、この引用は裏を返せば「自己評価が誤っている生徒は良い結果を出せず上達もしない」ということを言っているのです。では、彼らはなぜ正確な自己評価をできないのでしょうか。それは、「評価基準がわからないから」ではないでしょうか。少なくとも、私はそう思っています。教員が生徒が確実に理解できるように評価基準を提示していなければ、ほとんどの生徒は誤った自己評価をするか、自己評価を試みる前に途方に暮れるかします。いわゆる、「何がわからないのかわからない」という状態です。この先に待っているのは恐らく「ギブアップ」です。

 

今間違っているのはどの評価基準を満たしていないからなのか。次に何を修正すれば評価基準を満たしたことになるのか。これが具体的にわかっていれば、そして、手助けをしてくれるクラスメートや先生がいれば、どんな生徒でもきっとかなり正確な自己評価ができるようになるはずです。具体的な評価基準の重要さについては初回からしつこく書き続けてきましたが、一応、最も関連性の高そうな2つを以下に挙げておきます。

具体的な評価基準を設定して学びの質を上げる - 先生のためのたぶん今から使えるアイディア

ルーブリック、ルーブリック、ルーブリック! - 先生のためのたぶん今から使えるアイディア

 

そんなわけで、ここでもやはり具体的に書かれたルーブリックは役立つと言えそうです。さらに、ルーブリックの効果を最大限にするために、たとえば授業の半分やすべてを使って、各項目についてクラスやグループで「これはどういうことか」「これはなぜ大事なのか」といったテーマを話し合わせ、生徒のルーブリックへの理解を深める手助けをすることもできます。ルーブリックをゼロから生徒と一緒に作るという選択肢もありますが、他の先生と組んで同じ授業を教えている場合にはこれは現実的ではないかと思います。

 

もちろん、ルーブリックは万能ではないということも頭に置いておかなければいけません。たとえば、Huang & Gui (2014) は、実際の英語の授業を使った研究で「発音と時制に関してはルーブリックはほとんど効果がなかった」という結論を出しています。ルーブリックの作り方にもよるかもしれませんが、でも、想像できますよね。自分が正しい発音をしているかどうか、ノン・ネイティブが正確に自己評価するのって難しいじゃないですか。同様に「これwill workかなー、will be workingかなー」というのはネイティブが実際に使っているのを山のように聞いてもまだ確信が持てないような領域のことかと思います。(私だけ?)こういう場合は、人間と人間がコミュニケーションをとりながら評価を正確にしていく必要があります。

 

ルーブリックを使う生徒の様子を観察しながら、何はルーブリックでカバーできて何はルーブリックではカバーできないかを判断し、後者を授業内の学習活動として扱ってカバーすることもできそうですね。(これもformative assessment/feedbackです。)ペアワークやグループワークなどで生徒同士にお互いの自己評価を手伝わせることから、生徒と教員のQ&Aまで、やれることはたくさんありそうです。

 

長くなってしまいましたので、今回はこの辺りで。次回はフィードバックについて書くかもしれません。それではまたその時まで。

 

Happy teaching, my friends!!

  

参考:

Huang, Y., & Gui, M. (2014). Articulating teachers’ expectations afore: Impact of rubrics on chinese EFL learners’ self-assessment and speaking ability. Journal of Education and Training Studies, 3(3), 126-132.

Nilson, L. B. (2013). Creating Self-regulated Learners: Strategies to Strengthen Students Self-awareness and Learning Skills. Sterling, VA: Stylus Publishing.

 

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