こんにちは。
今回はバックワード・デザインについてです。前回のルーブリックに関するエントリーとの関連性は最後に少しだけ。
バックワード・デザイン。backward(後ろ向き)という言葉の通り、ゴールから逆算しながら授業を計画していく方法です。大学などの教職課程で教わりましたか? 私は当時「バックワード・デザイン」(または「逆向き設計」)という用語を聞いた記憶はないのですが、この方法自体はなんとなく教職課程で習った気がしないでもありません。私から見ると、多くの先生が常日頃から頭の中で自然とバックワード・デザインをやっていらっしゃるように見えます。
例を挙げるとこんな感じでしょうか。
- 中1の夏休み前、学年の約半分がbe動詞と一般動詞を混同していることに気付く(課題/解決すべき問題の発見)
- 9月の最初の授業5回を使って、be動詞と一般動詞が区別できるようにしたい(目標の設定)
- 新しい語彙や表現が少なく、be動詞と一般動詞に集中できるような教材が必要(教材の決定)
- 通常授業は発話中心だが、この5回はドリル形式の練習も行う(指導法の決定)
で、ここを叩き台にして5回分の授業で何をどうするかを具体的に計画してく…。というのがバックワード・デザインっぽいのですが、実はここにもう一項目加わるのだというところがミソで(あると少なくとも私は思っていま)す。
「2. 目標の設定」の後に「評価の指標・評価方法の決定」という項目が入るのです。具体的には、「3. 何をもって”be動詞と一般動詞が区別できた”と評価するのか、そして、どんな方法でそれを評価するのかを決める」といった感じで。
まず、「何をもって”be動詞と一般動詞が区別できた”と評価するのか」という評価の指標ですが、これは以下のように複数考えられます。
- 「見て(聞いて)区別がつく」
- 「英作文で正しく使い分けられる」
- 「しゃべったときに使い分けられる」
- 「2つのちがいを説明できる」
例えば、この4つの指標すべてを採用した場合、1回の授業につきこの内の1つに焦点を当てるとかいったふうに、授業の組み方が自動的に決まってきます。
そうすると、次の評価方法も、「この日はペーパーテストで」「この日はスピーキングで」「この日は活動の観察で」といったように、評価の指標に合ったものが自動的に決まってきます。そうすると、「各授業のシメの活動でよいパフォーマンスをするためには生徒はどんなサポートを必要としているか」と逆算して各授業の中身を決めていくことができます。
目標設定というのは、学習指導要領や各学校のシラバスの中で行われているのですが、「じゃあそれどうやって評価するの?」というところは実は十分に議論されていないような気がします。もちろん、小テストや定期考査といった評価方法はあるわけですが、それらが当初設定された目標に対する到達度を測るのにはふさわしくない場合があるのではないでしょうか。
たとえば、中1英語だとこんな感じでしょうか。
目標:生の英語にふれながら中学英語の基礎となる語彙と文法力および発音を身につける
評価方法:小テストおよび定期考査
もし「生の英語にふれる」ことや正しい「発音を身につける」ことが目標なら、それらをどう評価するのかを決め、実際に評価し、その評価を成績に反映する必要があります。ですので、上記のような状態には目標と評価との間にミスマッチがあるということになります。
こういう目標と評価のミスマッチを解消するためのお役立ちツールがルーブリックだと私は思っています。
目標を設定した後、教材や指導法を決める前、ここに「ルーブリックの作成」というステップを入れる。これです。大きな目標に対して、ルーブリックに入る各項目は「小さな・具体的な・評価(計測)可能な目標」となります。大きな目標が大きな(あいまいな)ままだと、評価方法もあいまいになり、そして各学習活動の目的もあいまいなままになりがちです。
「バックワード・デザインはルーブリックの作成から始まる」と言っている研究者もいるほど(出典を忘れてしまったのですが)、ルーブリックの作成が授業計画・実施に対してもつポジティブな影響力というのは計り知れません。1単元分のシングル・ポイント・ルーブリックなどをぜひ試しに作ってみてください。「なるほどね~!」となること間違いなしです。
*シングル・ポイント・ルーブリックについてはこちら
それでは、また次回まで。
Happy teaching, my friends!!