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EdTech導入・運営のためのチェックリスト

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Photo by Daria Nepriakhina on Unsplash

 

EdTechデバイスやアプリやサービスの導入・運営を新たに始めるときは、本来であれば、綿密な準備期間が必要となります。

 

こちらの記事中では、たとえば、大学のオンライン授業であれば、準備に通常は6~9か月ほどかかると言っています。

er.educause.edu

Typical planning, preparation, and development time for a fully online university course is six to nine months before the course is delivered. 

 

この6~9か月という数字が、基本的なインフラの整備から始めなければならない状況を想定したものなのかは不明ですが、仮に基本的なインフラの整備から始めなければならない状況を想定したとき、その6~9か月間で何が行われるべきなのでしょうか? 

 

上記の記事の中でも、「9つの分野でやることがあるよ」というふうに触れられているのですが(下線部)、これは授業そのものの計画に関わる項目で、基本的なインフラ整備に関わる項目は含まれていない、と読めると思います。

One of the most comprehensive summaries of research on online learning comes from the book Learning Online: What Research Tells Us about Whether, When and How.8 The authors identify nine dimensions, each of which has numerous options, highlighting the complexity of the design and decision-making process. The nine dimensions are modality, pacing, student-instructor ratio, pedagogy, instructor role online, student role online, online communication synchrony, role of online assessments, and source of feedback (see "Online learning design options"). 

(underline added)

 

では、「基本的なインフラの整備から始めなければならない状況を想定したときの、Edtech導入・運営のためのチェックリスト」があるとしたら、それはどのようなものか? …と考えたとき、数年前にEdTechの授業でまさにドンピシャなリストをもらったことを思い出しました。

 

教授からはあくまで「チェックリストの『未完成バージョン』」としてシェアされたことを先に断っておきます。また、授業の中でも、こういったチェックリストは各学校の現状に合わせて変更されることになると強調されていました。

 

という前置きをしたうえで。以下がその「基本的なインフラの整備から始めなければならない状況を想定したときの、Edtech導入・運営のためのチェックリストの『未完成バージョン』」(長い)です。ざっくりと、「前段階」「初期段階」「中期~後期段階」という3つの段階に分けられています。(なぜ教授がこういう分類にしたのかは謎。)

 

項目の内容に重複があるように見えるところがあると思いますが、各先生方に柔軟に解釈していただいてかまわないと思います。というか、まず私自身がこのリストを英語から日本語に訳す時点で私の解釈を加えてしまっているはずなので、そちらもあわせてご承知おきください。

 

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前段階
• そのEdTechを導入・運営するの理由を明確化する
  -そのEdTechを導入・運営する目的を明確化する
  -そのEdTechの導入・運営へのニーズを調査する
  -そのEdTechの導入・運営が誰のためなのかを明確化する
• 学校、地方自治体、国といった各レベルで義務とされていること、また、制限されていることを確認する
• 現場の現状を分析をする
  -教員のスキルやEdTechに関する見方を調査する
  -すでに利用されているEdTechは何かを確認する
  -すでに実施されているEdTech利用とこれからやろうとしていることの関係性を分析する
• 利用可能な資源を探す(物的資源、人的資源、金銭的資源)
  -先行実践例を見る
  -研究論文を読む
SWOT分析を行う(強みStrengths、弱みWeaknesses、チャンスOpportunities、脅威Threats)
• そのEdTechを導入・運営した場合の関係者(関わる人・影響が及ぶ人)を挙げる

 

初期段階
• 関係者の代表から委員会をつくる
• そのEdTechの導入・運営におけるビジョンとミッションを決める
• 委員会のリードの下、そのEdTechの導入・運営のための計画を立てる
• 配慮すべき事項をまとめる(方針や方向性がぶれないように)
• 関係者がどのようにコミュニケーションを取り合うかを決める(ツール、タイミング、誰にどんな情報を何のために伝えるか)
• 技術的なサポートをどのように得るか、また、与えるか計画を立てる
• そのEdTechの導入・運営が、プロセスの段階から、関係者にとってインクルーシブなものになるよう計画を立てる

 

中期~後期段階
• 短中長期的な目標を適宜設定、調整する
• タイムラインを適宜設定、調整する
• そのEdTech導入・運営の成功・不成功の測り方を決め、また、測るツールを用意する
• 試運転をする
• 教職員の研修を計画・運営する
• ここまでの段階から得られたフィードバックを改善に活かす(くり返す)

 

※ オリジナルはDr. Peter Arthurによるものです。

peterarthur.ca=====================================

 

現在、日本の多くの先生方が「GW明け」を期日に、遠隔授業の準備を進めていらっしゃることと思います。今日から数えると、準備期間は残り1週間です。したがって、「基本的なインフラ整備から始めるという選択肢はそもそも無視して、手持ちのコマで戦う」というのが与えられた唯一の道なのだと思います。

 

そんな中、なぜ私が上記のチェックリストをシェアしたのか。それは、なんとなくしておいた方がいいような気がしたからです。

 

今までの教員生活、何においても、見切り発車をして結果オーライだった経験がないので、大事なことの多くを「走りながら」決めていくことに対して、私がビビっているのでしょうね(小者)。EdTech そのものは大好きなので、先日の文科省からの「Youたち、とにかくできることやっちゃって!」というお達しにはテンション爆上がりなのですが、今の「目隠しでとりあえず全力疾走」という状態を続けた場合にどこに行きつくかについては、あまり希望を持てずにいます。年のせいかな。このリストが私にとってのレファレンス・ポイントとなって、大きく道を踏み外すことを防いでくれるのではないかと願ったりしているのかもしれません。

 

さ、それではまた次回まで。Happy teaching, my friends!!

 

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