先生のためのアイディア帳

効果的な指導法やエトセトラについて

オンライン授業を昨年まで受けていた私が最高だったオンライン授業を紹介してみる。

こんにちは。

  

さて、5/7(木)からの学校再開が実際に可能なのか見当もつかない中、「オンライン授業」についての議論が活発になってきています。遅ればせながら、私にももしかしたらシェアできることがあるかもしれないと、このエントリーを書いています。シェアする内容というのは、タイトルの通り、「オンライン授業を昨年まで受けていた私が最高だったと思うオンライン授業」です。

 

このエントリーの内容は、ICT環境が整っていない学校の先生にこそ応用して使っていただきたいです。(私の勤務校のように)ICT環境が整っていない学校では、今後数か月間は、分散登校や郵送という手段をとりながら、児童生徒の学びを継続させていくしか方法がないと思います。「ほぼオフライン」でも、対面やオンラインでのような丁寧な指導の実現する方法はないか。そう考えたとき、ここでご紹介する授業運営の仕方が使えるのではないかと思いつき、このエントリーを書くに到っています。ここから先にご紹介する「オンライン授業」で使われているノウハウは「ほぼオフラインの遠隔授業」にも十分応用できるものだと思います。

 

 

大事なことを先に言っておきます。「授業動画もライブ配信もたぶんマストじゃないですよ!」「この最高だったオンライン授業、基本Wordしか使ってませんでしたよ!」これです。このエントリーが、先生方とオンライン授業(それが不可能な場合にはほぼオフラインの遠隔授業)との間に立ち並んでいるハードルをいくつか取り除く一助になれば幸いです。

 

さて。では。

昨年まで通っていたUBCの大学院では私は対面授業とオンライン授業をちょうど半々で履修していました。どれもとてもよかったのですが、オンライン授業の中で特によかったのが、「Global Education, Citizenship, and Cross-Cultural Conceptions of Teaching and Learning(グローバルな教育、市民権、そして教育と学習に関する多文化的な考え方)」という授業でした。

 

はっきり言って、この授業の内容それ自体はこのブログのエントリーのテーマとは関係がありません。重要なのは、このオンライン授業の運営方法です。授業の内容までわかった方がイメージしやすいという方もいらっしゃるかもしれないので、一応内容もご紹介しますが、多くの方にはそこは無視していただいていいだろうと思っています。

 

そんなわけで、その授業の運営方法は以下の通りでした。

 

授業頻度:週1回

※ 厳密には「週に1回課題の締切があり、それをクリアしたら次の締切分の課題に進む」という形。ある1週間はある1つのテーマに取り組むことになるので、なんとなく「週1回授業を受けている」感じになります。大学院の典型的な授業の進み方かと思います。「週に1回授業があって、そこでの内容をふまえて出された課題に(翌週の)次の授業まで取り組む」という。

プラットフォームCanvas

※ 日本でCanvasを使っている学校があるというのは聞いたことがありません。Google ClassroomでもEdomodoでもClassiでも、先生方が利用できる(できそうな)プラットフォームで当てはめてお考えいただえれば大丈夫です。

教授が授業準備に使っていたツール:Word、上記のプラットフォーム

生徒に必要だったもの:ネット接続、デバイスタブレットでもノート型パソコンでも)、プラットフォームに接続するための学校からもらうアカウント

内容:Global citizenship(グローバル化した世界における市民権)にまつわる様々なテーマを、1週間ごとに1つ学ぶ。(グローバル化した世界における教育、市民権についての多様な見解と倫理、帝国主義と人種差別、多文化社会とコミュニケーション、資本主義と新自由主義と消費社会、メディアと若者のアイデンティティ、地域活動とNGO、などなどがテーマでした。)

※ こちらは、先生方の担当教科・学年に合わせて自由に単元を当てはめてお考えください。

進め方

1.1週間ごとに1つのWord文書が与えられる。そこに教授が学習活動の指示をまとめてくれているので、学生は時間のある時にそのとおりに進める。

※ 指示は、「この動画を見なさい」とか「この記事を読みなさい」とか「このウェブサイトのこのデータを分析しなさい」とかいったことから始まり、「この中の○○という考え方は△△だと思いますか?なぜそう思いますか?もしくは、なぜそうは思いませんか?」のような質問や、「以上の活動を通してあなたが考えたことを約□□□字でまとめなさい」という課題の提示につながる。

簡単に言うと、ゲームブックをやる(読む)感じと似ています。

2.各Word文書の最後には、上記のような、自分の考えをまとめるための作文の課題があり、その作文を期日までにCanvas上のブログにアップする。

3.他の学生も同じようにするので、彼らの作文の中で自分が気になったもの2つ以上に期日までにコメントをする。

4.↑ここまでで、1モジュール終了。あとは、教授やクラスメートがくれたコメントを読んだり、もし自分がそうしたければ、それらのコメントに返事を書いたりする。

 

通常の授業はここまでです。

あとは、学期末のプロジェクトですが、それは以下のように行われました。

 

1.学期末にはグループでのプロジェクトがあり、Global citizenshipにまつわるテーマを自分たちで選び、授業プランを1つのWord文書にまとめる。(教授が私たちのために用意してくれた通常授業での指示のフォーマットを参考にする。)

2.グループ・プロジェクトの際には、学生間のコミュニケーションはCanvasを使っても使わなくてもよい。(私たちは終始Google Docsを利用しました。)教授に質問があるときには、Eメールを送る。

3.プロジェクトが完成したらCanvasにブログの1エントリーとしてアップする。Google Docsのリンク先をブログにそのまま貼り付けてもよい。他の学生はプロジェクトを通じて計画された学習活動を児童・生徒の気持ちになって実際にやってみて、その感想などをコメントとして書く。

 

イメージしていただけたでしょうか…(自信ないぜ…

 

シラバスと実際のWord文書をドンとここでご紹介できたらこの伝わらなさは一発で解消されるのですが、著作権を考慮して、それは控えておきたいと思います。代わりになるかわからないのですが、中1英語で仮にこの形式でやるとこんなふうになるよ!という例を作ってみましたので、お目汚しまでに…ご覧…くだ…さい…(気づいています…この例のせいで余計いろいろわけがわからなくなることは…そして…まずこの例が小さすぎて見えないということも…

 

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もしプラットフォームとしてGoogle Classroomを使うのであれば、Google Formsとセットにしておいて、そこで生徒に質問に答えてもらうといったことができますね。

 

冒頭でも書いているように、今後「ほぼオフラインの遠隔授業」を行わなければならなくなる先生方は、1週間分の授業内容を1つのWord文書にまとめて、配布するなり学校のウェブサイトにアップするなりできるのではないかと思います。(生徒の理解度・習熟度を測るための活動に関しては、私もまだ調査中&考え中です。)

 

とにかく(切り替え!)、このUBCで受けていたオンライン授業が本当によかったのです。私のクラスメートも絶賛していました。よかった理由を思いつく限りで挙げてみると、以下のようになります。

  • インプットの量が十分にあった。(動画や記事や論文やウェブサイト)
  • インプットの後に具体的な質問項目があったため、インプットについて考えを深めやすかった。(「~について考えなさい」といった抽象的な指示は一切ありませんでした。)
  • インプットについて考えた後にはアウトプット(書く作業)を行わせる課題が続いていたので、与えられたトピックについての自分の考え方や立場を整理し、客観視することができた。
  • 他の学生の作文を読んでコメントを書くという課題があるので、学生の数だけある多様な考え方や立場について知ることができ、また、それに自分の考え方や立場が影響される様子を言葉にして整理することができた。
  • 教授のレスポンスが迅速かつ丁寧だった。質問に対してもブログに対しても、とにかく数時間で必ず返信やフィードバックがあり、しかも適切で良質だった。

 

この授業を受けた時点で、私はすでに3つほどオンラインの授業を終えていました。中には、パワーポイントで作成された動画を使っている授業や、ご自身が話している様子を撮影して使っている授業や、ライブ・ビデオチャットを使った授業もありました。どれもよかったのですが、「自分の頭を使ってとことん考えて、その経験が自分の中に今も生きている」と一番思えるのは、やはりこのGlobal citizenshipの授業でした。

 

内容自体が面白かったというのもあると思うのですが、その面白い内容を選別してきてくれたのはそもそもその教授ですし、その材料の良さが最大限に引き出されるように授業を計画・運営してくれたのもその教授ですので、やはり、彼女の指導力が素晴らしかったのだと私は思っています。

 

この授業を受けてみて、「学習者の学びの充実度は、指導者がいろいろなアプリやデバイスを駆使して授業を行っているかどうかとは必ずしも関係がない」ということを私は感じました。

 

と書いているうちに、UBCにいたときのことを少しずつ思い出して、これに関連して書けることが他にもありそうな気がしてきています。そんなわけで、次回も「教育×テクノロジー」関連のことを何か書くかもしれません。

 

それでは、こんな時ではありますが、こんな時だからこそ、Happy teaching, my friends!!

 

===駄話===

2020年4月19日、日曜日、素晴らしい快晴の一日でしたね。昨年の今頃はまだ寒いカナダにいたので、帰国後に日本の春をエンジョイするのを楽しみにしていたのですが、どうしてどうして、この世は儘ならないものです。

 

とは言え、今年度から担任&担当する中学1年生と共通の話題を持つために、Amazon primeで『鬼滅の刃』を見たりして、なんとか有意義に過ごそうと努めています。

 

ちなみに、平日は在宅勤務です。学校からVMware HorizonがインストールされたChromebookを貸与されており、これを使って自宅から学校のサーバーに接続することができます。4/10(金)から在宅勤務がスタートだったのですが、Chromebookの操作に慣れたり学校のサーバーのどこに何があるかを確認したりする時間をしっかり取ることができ、ありがたかったです。Horizonの動作が遅くてウィンドウの切り替えだけで毎回5秒くらいかかって(本当です)仕事の効率が半減(誇張です)していることを除けば、通常の仕事もまあまあ快適にできています。

 

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