先生のためのアイディア帳

効果的な指導法やエトセトラについて

『未来の先生展2019』に参加してきました:「道徳読み」との出会いなど

こんにちは。

 

先々週の土日は『未来の先生展2019』に参加してきました。今の学校では土曜日が研究日なのですが(私立で授業が週6日ある)、研究日を研究のために使えるというのは本当にうれしいです。

 

前任校に勤めていた時は、「採点」「テスト作成」「授業準備」「入試広報」といった業務で研究日と休祝日がほとんど潰れていたので、そういった日に研修会が開催されていてもまず行っていませんでした。まともに寝て家事をするだけで一日が終わってしまうことも多かった気がします。

 

という愚痴はさておき、『未来の先生展2019』です。(一言小言を言ってからでないと本題が始まらないのが定番になってきました。)

 

 

プログラムによると2日間で134のワークショップや講演会が行われたということですので、これは大規模ですね。各日、10:30-17:50を4コマに分けて、25を超える教室やレクチャーホールを使って、それぞれのワークショップや講演会が行われました。

 

2日間で最大8つのワークショップや講演会に参加できて、費用は3000円。場所もお茶の水明治大学リバティータワーでアクセスがいい。発表者は現場で活躍されている方ばかりで(少なくとも私が参加したものは)、内容が実践的。自分自身の実践を振り返るための新しい視点や、自分の授業に取り入れてみたいアイディアが山のように得られます。

 

ただの参加者なのに『未来の先生展2019』の人が宣伝しているみたいになってきましたが、こういった機会を設けてくださった関係者の方には一参加者として感謝の気持ちでいっぱいなので、宣伝できるものならしておきたいと思います。来年も開催されることと思いますので、興味のある先生方はSNSで『未来の先生展』のアカウントをフォローしておかれることをお勧めします。

 

 

ちなみに、私が参加したのは以下のワークショップと講演会でした。

1日目

  1. 「道徳読み」研究会千葉支部  教科書をフル活用する新しい道徳指導~「道徳読み」
  2. 授業づくりネットワーク 「まなびほぐし」を定時制実践で考える
  3. 協同教育カフェ・相模原市立鶴間中学校 集団を育て、自分の良さを伸ばす生徒主体の学び コーペラティブラーニングの実践を通して

2日目

  1. 株式会社mpi松香フォニックス 英語4技能は「書く」がHUB~TAGAKIが目指す英語教育の新たな可能性~
  2. 未来の先生展2019開催記念鼎談
  3. 一般社団法人読み書き配慮 世田谷区立桜ケ丘中学校西郷改革の陰には特別支援教育の視点あり 合理的配慮は教育の本質を問う
  4. 一般社団法人読み書き配慮 さらに深堀り!合理的配慮~読み書き配慮が興す現場革命~

 

どのワークショップにもどの講演会にも別々のよさがありましたが、特に参加できたよかったのは2つで、1日目の「道徳読み」のワークショップと2日目の「合理的配慮」の講演会でした。「合理的配慮」に関してはオンラインにもたくさん情報があるので、今回のエントリーでは「道徳読み」のことだけ書いておこうかと思います。

 

《「合理的配慮」関連》

 

ただし、「道徳読み」に関しても本が出ていますので、そちらを読む方がよいだろうことは言うまでもありません。

 

《「道徳読み」関連》

http:// http://www.sakura-sha.jp/book/jyugyo/doutokuyomi/

 

ではあらためまして、「道徳読み」のワークショップについてです。

 

とにかく、「道徳読み」という概念に出会えたことが私には何よりの大収穫でした。たとえば、「太郎はそれまで500円だった小遣いを父に交渉して1000円にしてもらった。」という同じ文でも、「算数の読み方」、「国語の読み方」、「道徳の読み方」といったふうにいろいろな読み方ができる、と。(この文だと、社会的背景に注目すれば「社会科の読み方」もできそうですね。)

 

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ある文章を「道徳的価値」に注目しながら読んでいくのが「道徳読み」なのだそうです。

 

ワークショップでは瀧澤真先生が『あとかくしの雪』と『ブランコ乗りとピエロ』を使いながら、実際に授業をしてくださいました。やー、素晴らしかった…。授業の上手い先生の模擬授業を受けていると、授業の仕方を学びに来ているにもかかわらず思わず学習者気分で授業に入り込んでしまいます。もうふつうに道徳を学んでしまいました。

 

授業の流れは以下のとおりでした。

  1. 先生が教材文を音読する
  2. ペア:一人がもう一人に教材文となっている話の概要を伝える
  3. 個人:道徳的価値を探す(道徳的価値が書かれていると思われる箇所に傍線を引き、自分が見つけた道徳的価値を書き添える 例:「親切」「感謝」「盗み」など)
  4. ペア:見つけた道徳的価値について交流(「議論しない」ことが大事ということなので「交流」という言葉を使っているのだと思います。)
  5. 全体:見つけた道徳的価値について交流(先生がリード)
  6. 個人:自分事として振り返る(登場人物にAかCの成績をつける。※「自分事」にするために自分の立場を明確にしたいので、Bはつけない。)
  7. 全体:AかCのどちらを選んだかの理由を共有する。Aが全員立ち上がり、一人ずつ理由を話す。その間、似た意見を他の人が言っていたら自分も座る。終わったらCが全員同じことをする。)聞いた後にAからC、もしくはCからAに意見を変えてもよい。(先生がリード)
  8. 個人:作文←これはこのワークショップではやりませんでした。実際には、自分が評価した登場人物への考察を自分自身と関連させて短い作文を書くのだそうです。

 

面白かったのは、この模擬授業が、道徳の授業というよりは、文学研究の授業のような感じだったことです。「道徳的価値」に注目しようとすることで、文章から意味がジワジワ浮かび上がってくるように私には感じられました。一見無味乾燥な事実や風景の描写も意味をもってそこに存在しているように感じられてくるというか。

 

私はその昔文学研究をちょっとしていたのですが、その頃の「読み」を思い出しました。

 

そして、この「道徳読み」の授業が文学研究よりエキサイティングだったのは、上のような授業の流れの中で、本当に多様な意見に出会うことができ、そして、教材文を自分事にできたおかげでした。

 

もし教採に合格できれば私も来年から初めて公立中学校で道徳を教えることになるのですが、このワークショップに参加する前はただただ「無理でしょうよ…」と思っていたのです。私は基本的には「世の中何でもあり」だと思っているような人間なので、どう考えても道徳を子どもに教える立場にはないだろう、と。

 

ですが、このワークショップのおかげで、「教材文を拠り所にしつつ、生徒たちの道徳的価値に関わる部分の思考を刺激していく」ことが道徳の授業における教員の役割なのだと経験を通じて学ぶことができ、これなら私にもできるかもしれないと思えた次第です。他にも先生の数だけ授業の展開の仕方はあると思うのですが、私には瀧澤先生のこの展開の仕方なら、生徒に私自身の価値観を極力押し付けることなくやっていけそうな気がしました。(とはいえ、それでも教員の価値観はけっこうしっかり伝わってしまうとは思います。まあ、ゼロにするのはそれこそ無理なので…モゴモゴ…)

 

「なぜ道徳が特別な教科に?」など、道徳を義務教育で教えること自体に関してツッコミを入れた方がいいとはわかりつつも、年を取るにつれてだんだん「今ある枠組みの中で最善のものを目指す」みたいな保守っぽい方向に流れてきていまして。そもそものところを議論するエネルギーを省エネして、とりあえず次にある授業をよくする努力に回してしまうんですよね。そこを省エネせずに頑張ってくださっている多くの方には本当に謝りたいです。すみません。

 

というわけで、今回は「道徳読み」に特にフォーカスしながら『未来の先生展2019』を振り返りました。

 

先生方に何か役立てていただけることがあったらうれしいです。私は、英語科教員としてもこの「道徳読み」が使える機会がある気がしているので、そんな目で今後は教材を眺めることになりそうです。

 

それではまた次回まで。

 

Happy teaching, my friends!!

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