先生のためのアイディア帳

効果的な指導法やエトセトラについて

「学び方」を身に着けている生徒が伸びる

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Photo by Mathew Schwartz on Unsplash

こんにちは。

 

今日はこの辺りこの辺りとつなげて、「『学び方』を身に着けている生徒が伸びる」ということを書きます。(前回「次回はフィードバックについて書くかもしれません」と言って終わりましたが、それについてはまたいつか。)

 

「学び方」をパッと英語にしようとするとhow to learnが出てくると思いますが、アカデミックな書き物に頻出する用語で考えると、learning strategiesが当てはまりそうです。

 

「学び方」とかlearning strategiesというと大ごとのように聞こえますが、先生方はすでにかなりの確率で生徒たちに「学び方」を指導されたことがあると思います。たとえば、

  • ノートの取り方
  • 暗記法
  • 勉強時間のスケジューリングの仕方
  • やる気がでないときの対処法

といったものでしょうか。

 

もしくは、教科に関して言うと、たとえば英語なら、

  • 語彙力を上げる方法
  • リスニング力の伸ばし方
  • 多読のための適切な本の選び方
  • 英会話中に緊張しない方法

などですかね。

 

興味をお持ちの先生は、learning strategiesでGoogle検索をしてみて下さい。海の物とも山の物とも知れないものまで含めて(失礼)、わんさか出てきます。

 

strategyという単語は、Archer & Hughes (2011)によると以下のように定義されています。

systematic plans or approaches for solving a problem or completing a task that involves series of sequential steps(p.23)

問題を解決するため、もしくは複層的な課題を遂行するための体系的な計画や方法(訳:私) 

*日本語が急に小難しい感じになってしまってすみません…

 

つまり、何かを学んでいて「困ったな」と思った時、この困った状態(問題)を解決するために使える方法がlearning strategiesもしくは「学び方」というわけです。または、段階を追って処理する必要があるような複雑な課題に取り組むために使える方法がlearning strategiesもしくは「学び方」というわけです。そう考えると、詳しく調べていないので私の推測にすぎませんが、learning strategiesもしくは「学び方」というのは学びの状況の数と同じくらいあるのかもしれません。

 

実際の指導の現場では、生徒が「困ったな」と思う前に先生が「学び方」を示していることが多いような気がします。たとえば、私の今いるカナダの大学では図書館司書や職員の皆さんがノートの取り方、リサーチ関連のデータの管理の仕方、ディスカッションへの参加の仕方などの多岐に渡る話題についてワークショップを開いています。こんなふうに「対処法、ここにありますよ!」と働きかけることは、学生が本格的に「困った…」となる前の予防策にもなっていると思います。

 

終わりに一応参考文献を挙げましたが、それをするまでもなく多くの先生がお察しのとおり、また私も冒頭でも書いたとおり、「学び方」を身に着けている生徒というのは伸びるものです。というのは、学びという行為そのものが問題を解決することや課題に取り組むことの連続だからです。

 

ちなみに、複数の論文の中で繰り返し書かれていることで私が面白いと思ったのはこの2つです。

  1. 優秀な学習者はそうでない学習者より自分の学びの過程について自覚的である
  2. 優秀な学習者はそうでない学習者より多くのlearning strategiesを駆使している

 

優秀な生徒は何も考えなくても何でもできてしまうから優秀なのではなくて、よく考えながらわからないことやできないことについてきっちり対応しているから優秀だということですね。

 

上の2つをこれから生徒を指導する先生目線で言い換えると以下のようになるでしょうか。

  1. 生徒が、自分が今何をやっているのか自覚できるように指導するのが理想的
  2. 生徒が複数の学び方を使いこなして学べるよう指導するのが理想的

これは前回のエントリー「できる生徒=自己評価ができる生徒」とかなり関連しますね。

 

ここで注意しておくべきなのは、テッパン(古い?)の「学び方」というのはなくて、各学習者が自分にとって効果的に働く「学び方」をたくさん身に着けていて、それを状況に応じて使い分けられるようになっていることが大切だということでしょうか。(これは「生きる力」にもつながりそうですね。)

 

具体的な教科指導を改善することはもちろん、「学び方」の指導を改善することも生徒の学びの質の向上に大きくかかわります。この「教科指導」と「学び方の指導」がものすごく近づいているのが今言われている21世紀型学習というものなのではないかと思ったり思わなかったり…(適当)

 

次回の内容はまだ決めていませんが、またその時まで。

 

Happy teaching, my friends!!

 

参考:

Archer, A. L., & Hughes, C. A. (2011). Explicit instruction: Effective and efficient teaching. New York: Guilford Press.

Nazri, N. M., Yunus, M. M., & Nazri, N. D. M. (2016). Through the lens of good language learners: What are their strategies? Advances in Language and Literary Studies, 7(1), 195-202.

Pichon, E. L., Swart, H. D., Vorstman, J. A. S., & Bergh, H. V. D. (2013). Emergence of patterns of strategic competence in young plurilingual children involved in french international schools. International Journal of Bilingual Education and Bilingualism, 16(1), 42-63.

Yang, P., & Wang, A. (2015). Investigation the relationship among language learning strategies, english self-efficacy, and explicit strategy instructions. Taiwan Journal of TESOL, 12(1), 35-62.

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